2011年11月18日
サマリー
ドイツ環境省は10月14日、送電企業4社の報告に基づき、2012年の固定価格買取制度(Feed-in Tariff: FIT)による賦課金が3.59ct/kWhとなる見通しを発表した(※1)。ドイツは2000年に再生可能エネルギー源法(EEG)を施行、電気事業者に再生可能エネルギーによって発電された電力を全量、一定の期間、一定の価格で買い取ることを義務付けるFITを導入した。同制度により、2000年から2010年までに再生可能エネルギーによる発電量は6倍に増え、総発電量に占める割合は17%に達した(※2)。EEGでは再生可能エネルギーの買取コストは電力料金に賦課金として転嫁され、電力の最終需要家が負担する仕組みとなっている。再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、2000年から2010年までに賦課金は10倍に増加した(図表)。今回発表された予測によれば賦課金は2012年に2000年比18倍に増える見通しである。
ドイツは7月に原子力法の改正により、2022年までに国内に17基ある原子力発電所を全て廃炉とすることを決定した。再生可能エネルギー導入量の増加は今後も続きそうだ。ドイツの電力料金はEUのなかでも高いため、産業界からはさらなる電力料金の上昇を懸念する声も聞かれるが、2011年の再生可能エネルギー庁の調査によれば、国民の8割がEEG賦課金3.5ct/kWhの水準を許容しているとの結果が出ているという(※3)。日本でも来年7月からFITが導入されるが、国会での審議では賦課金の水準を0.5円/kWhに抑える方針が出された。ドイツの世論調査で挙げられた賦課金の水準は1EUR=110円換算で3.85円/kWhであり、日本で議論されている賦課金の水準を大きく上回る。ドイツではEEGへの世論の支持が、再生可能エネルギーの導入拡大を支えていると言えそうだ。
図表:ドイツにおける電力料金およびEEG賦課金の推移(産業部門)
E..on社資料より大和総研作成
(※1)BMU(2011) “EEG surcharge remains stable during strong growth in renewables.”(No.129/11.Berlin, 14.10.2011)
(※2)BMU(2011)Renewable Energy Sources in Figures.
(※3)脚注1参照
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