SRIファンドの運用拠点別の動向

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  • 伊藤 正晴

サマリー

SRIファンドの運用は、世界各地で行われている。そこで、Eurekahedge*のSRIファンド・データベースからデータの取得が可能であったファンドを対象に、運用マネジャーの拠点別の動向を分析した。

分析対象ファンドの運用資産額は2010年末が589億ドルで、2008年末の512億ドルから15.0%増えており、SRIファンドの規模は拡大しているようである。ファンド数は、2010年末が368本で、2008年末の400本から8.0%減少している。これらのファンドを対象に、運用拠点別の構成比を示したものが図表1である。ファンド数、運用資産額のいずれも欧州を拠点とするファンドが70%程度の高い比率を占め、次いで北米を拠点とするファンドが20%強、オセアニアが5%程度となっている。また、2008年末と2010年末の構成比に大きな違いはみられない。アジアを拠点とするファンドは、2010年末でファンド数の構成比は3%だが、運用資産額では0.8%しかなく、ファンドの規模が非常に小さい。しかし、2008年末と2010年末の運用資産額を比べると、69.6%と非常に高い伸びを示している。

図表1 運用拠点別のファンド数と運用資産額の構成比
図表1 運用拠点別のファンド数と運用資産額の構成比
(出所)Eurekahedgeより大和総研作成

次に、図表2が2007年12月末を100としたSRIファンドのリターン指数の推移を示したものである。いずれの運用拠点も、2008年後半の金融危機でリターン指数が大幅に下落し、その後は回復を示しているが、特にオセアニアを拠点とするファンドの下落と回復の幅が大きかった。また、2010年後半から、拠点によってリターン指数の動きに違いがみられる。オセアニアと北米を拠点とするファンドは、直近までほぼ上昇を続けているのに対し、アジアのリターン指数は2010年終りから横ばいとなっている。そして、欧州は上昇を続けてはいるが、北米などに比べるとその勢いは弱い。このように、運用の拠点によってリターン指数の動きに違いが生じる要因の1つに、ファンドが投資対象とする地域が異なっていることが考えられる。そこで、運用拠点ごとにファンドが投資している地域の構成比をまとめたのが図表3である。

図表2 運用拠点別のリターン指数の推移(2007年12月末=100)
図表2 運用拠点別のリターン指数の推移(2007年12月末=100)
(出所)Eurekahedgeより大和総研作成

2010年末をみると、アジアは世界全体に投資を行うグローバルが2割、アジアのみに投資するファンドが8割程度となっている。オセアニアはグローバルとアジアが各々5割程度となっているが、投資地域はアジアとオセアニアを合わせてアジアとなっているため、実際の投資地域はオセアニアである可能性が高かろう。欧州を拠点とするファンドはグローバルが6割、欧州が4割弱、そして北米を拠点とするファンドは北米が8割強、グローバルが2割弱となっている。欧州を除くと、いずれも運用マネジャーが拠点とする地域に投資を行うファンドが多いが、特にアジアと北米でその傾向が顕著である。北米と欧州については、かつて米国は投資する市場が非常に大きいため自国内での投資が多いのに対し、欧州では早くから国際分散投資が進められたといわれていたが、SRIファンドでもその特徴がみられるようである。また、2008年末と比べるとアジア拠点のファンドはアジアに投資するファンドの構成比が高まっている。アジアの高成長を享受するために、アジアを拠点としたアジア地域への投資が拡大したと考えられる。

図表3 各運用拠点での投資地域構成比
図表2 運用拠点別のリターン指数の推移(2007年12月末=100)
(出所)Eurekahedgeより大和総研作成

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