エネルギー・環境会議、初会合を開催

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2011年07月08日

  • 物江 陽子

サマリー

政府は6月22日、エネルギー・環境会議の初会合を開催し、エネルギー・環境政策策定に向けた検討を開始した。同会議は6月7日の新成長戦略実現会議で設置が決まった。国家戦略担当大臣が議長、経済産業大臣、および環境大臣が副議長、関係省庁の大臣が構成員を務める。

同会議では、短期的には当面のエネルギー需給安定化策を早急に具体化することで合意し、省エネルギー、自家発電、再生可能エネルギー、既存の原子力発電所の安全性確保の徹底などを対策の柱とすることを決定した。

中長期的には原子力発電重視のエネルギー政策を大きく見直すとし、以下の6つのテーマ([1]省エネルギー、[2]再生可能エネルギー、[3]資源・燃料、[4]原子力、[5]電力システム、[6]エネルギー・環境産業)について短期・中期・長期の論点整理を行うとした。また、エネルギーのベストミックスに向けて、(1)原子力等のコスト、(2)再生可能エネルギー等の技術革新と経済拡大効果、(3)化石燃料等の環境性能向上の可能性等を検証する方針を示した。

今後のスケジュールとしては、年央(7月中と見られる)までに論点の中間整理を行い、年内にエネルギー・環境戦略の基本方針を決め、来年には革新的エネルギー・環境戦略を策定する見通しである。

菅直人首相は5月に従来のエネルギー基本計画を白紙に戻す方針を示しており、同会議での議論は、エネルギー基本計画の見直しに反映されると見られる。昨年閣議決定されたエネルギー計画では、2009年に電力供給の30%を占めた原子力の割合を、2020年に50%まで増加させる目標が盛り込まれたが(※1)、福島第一原子力発電所事故を受けて、この目標は見直しを迫られている。一方、首相が注力する再生可能エネルギーは、コストの高さと安定供給上の課題が指摘されている。

これまで、原子力の発電単価は5.5~5.9円/kWhと試算され(※2)、その経済性が評価されてきた。しかし、立命館大学の大島教授の研究によれば、この試算にはバックエンド費用(使用済核燃料再処理費用、放射性廃棄物処分費用、廃炉費用)や原子力に関する財政支出は考慮されておらず、それらを考慮すれば発電単価は12円/kWh程度になるとされる(※3)。この試算と比較すれば、太陽光発電こそ49円/kWhと割高だが、小水力(7.2円/kWh)やバイオマス(7.8円/kWh)、風力(9~14円/kWh)などの再生可能エネルギーは、この水準よりも安くなる(※4)。ただし、特にポテンシャルが大きいとされる風力発電を大規模に導入するとなると、広域的な系統連系や蓄電システムの導入が必要になり、それらの費用を含めた場合の費用便益の評価が重要になろう。今後の議論で、原子力と再生可能エネルギーのコストがどのように評価されるか、エネルギー政策の今後を占う材料として注目したい。

(※1)資源エネルギー庁(2011)「平成21年度(2009年度)におけるエネルギー需給実績(確報)」

(※2)電気事業連合会(2004)「モデル試算による各電源の発電コスト比較」より。稼働率70%、割引率1~3%の数値を引用。

(※3)大島堅一(2010)『再生可能エネルギーの政治経済学』東洋経済新報社

(※4)総合資源エネルギー庁新エネルギー部会(2009)「新エネルギー部会中間報告」より。ただし、太陽光発電のコストに関しては、実際にはこれより下がっていると考えられる。2009年にはスペインにおける需要急減と中国企業の生産量急増により、太陽光発電のシステム価格は世界的に3割ほど下がったと言われているが、これら近年のコスト低下はこの試算には織り込まれていない

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