2011年07月01日
サマリー
まず、図表1がスクリーニング手法別の構成比を示したものである。ファンド数、運用資産額のいずれもポジティブ・スクリーニングのみを採用しているファンドが最も多く、スクリーニング条件をみると環境関連、社会問題、そしてコーポレート・ガバナンスに積極的に取り組む企業への投資が多い。次いで多いのがポジティブとネガティブの両方のスクリーニングを採用しているファンドで、ネガティブ・スクリーニングのみを採用するファンドは全体の2割にも満たないようである。ネガティブ・スクリーニングでは、たばこ・アルコール、ギャンブル、軍需関連等の企業を投資対象から除外しているファンドが多い。また、2007年末と2010年末を比較すると、ファンド数ではポジティブとネガティブのどちらか一方のスクリーニングを採用するファンドの構成比が増えているのに対し、両方のスクリーニングを採用するファンドの構成比は減少している。運用資産額ではポジティブ・スクリーニングを採用するファンドの構成比が増えているのが目立つ。
図表1 スクリーニング手法別のファンド数と運用資産額の構成比
(出所)Eurekahedgeより大和総研作成
図表2が2007年12月末を100としたSRIファンドのリターン指数の推移を示したもので、参考としてMSCIのAll Country World Indexを併記している。この図からわかるように、スクリーニングの違いを問わず、SRIファンドのリターン指数は株式市場の動きと連動性が高く、2008年のリーマン・ショックを契機とした金融危機による株式市場の急落と、その後の回復の影響を強く受けている。また、詳細にみると最近はネガティブ・スクリーニングのみを採用しているファンドのリターンが好調なようである。
図表2 スクリーニング手法別のリターン指数の推移(2007年12月末=100)
(出所)Eurekahedge、MSCIより大和総研作成
次に、個別ファンドのリターンの差をみるために、2009年4月から2011年3月までの24カ月間の年率リターンの分布を示したのが図表3である。リターン水準の低いほうにポジティブ・スクリーニングのみを採用するファンドが、リターン水準が高いほうにネガティブ・スクリーニングのみを採用するファンドが多い。また、両方を採用するファンドは、全体に分布している。ネガティブ・スクリーニングがリターンの向上に寄与したようにみえる。そこで、投資地域によってもリターンに差が生じる可能性があるため、各ファンドの投資地域を調べたところ、ネガティブ・スクリーニングは北米に投資するファンドが多く、これがファンド全体のリターンに寄与している。一方、ポジティブ・スクリーニングは欧州に投資するファンドが多く、これらファンドのリターンが低いことが影響している。しかし、株式市場動向をみると、北米と欧州のリターンは30%強でほぼ同様となっている。これらのことから、より詳細な分析は必要であろうが、ネガティブ・スクリーニングがリターン向上に寄与した可能性が示唆されよう。
図表3 スクリーニング手法別のリターンの相対度数分布
(出所)Eurekahedgeより大和総研作成
*Eurekahedgeのデータは、各運用機関及び外部の情報を元に作成しております。Eurekahedge及びその関係者は情報の正確性、完全性、市場性、仮定、計算などについて保証を行っておりません。情報の閲覧・利用者は、データの使用に際して、情報における全てのリスクを認識し、負う必要があります。Eurekahedgeではデータ及び情報に基づくいかなる理由の損害に関しても責任を負いかねます。データは、特定のファンド、有価証券、または金融商品、会社への投資に関する勧誘或いは販売勧誘を構成するものではなく、また、独立、金融機関、専門家としての助言として解釈されるべきではありません。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
中国経済見通し:名目<実質、実感なき景気堅調
不動産不況に一段の長期化の懸念
2024年04月25日
-
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
大手生保は中長期の事業環境の変化に対応できるか
~本格化するビジネスモデル変革~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
企業価値向上に向けて上場会社に高まるプレッシャー
『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
複眼的思考へのヒント
2024年04月24日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日