欧州委員会作成の温室効果ガス削減ロードマップの確定期日迫る

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2011年06月24日

  • 水口 花子

サマリー

欧州委員会は2011年3月8日、2050年の低炭素経済へ向けたロードマップを公表した。ロードマップでは、温室効果ガスを2050年に1990年比80%以上削減する目標の達成には、追加資金が毎年平均2,700億ユーロ必要であるとした。内訳は、自動車やインフラ整備に対する資金1,500億ユーロ、建築物などの省エネに750億ユーロ、発電所や電力網に300億ユーロなどである。

これにより削減できる燃料費は平均1,750~3,200億ユーロと試算しており、投資額を回収できない可能性も示唆されている。しかし、それにより2020年までに150万人の新規雇用が創出される可能性や、大気汚染や健康に関するプラスの側面、エネルギー安全保障上の利益を考慮すれば、十分に採算が取れるとしている。

温暖化対策において大きな役割を果たすエネルギー政策については、2011年2月4日にEU首脳会合で合意されている。2010年11月に欧州委員会が策定したエネルギー戦略「Energy2020」がベースとなっており、EU首脳会合は欧州委員会に必要なインフラ投資と資金調達への対応などの報告書を2011年6月までにまとめるように要請した。

資金調達の額は、欧州委員会が報告した汎欧州エネルギー市場の統合に向けた詳細計画が参考となりそうである。同計画では、2020年までに1兆ユーロ程度の投資が必要であること、少なくとも電力網だけで2,000億ユーロが必要と報告。また77.5万人の雇用の増加と190億ユーロのGDP増加を見込んでいる。

図表1はエネルギー計画を構成する具体的な再生可能エネルギーの種類と設備容量、発電量の抜粋である。計画では2020年には発電量のシェアにおいて風力が水力を上回り、2010年比約3倍の発電量となる見込みである。一方、風力の設備容量は同2.4倍に対し、太陽エネルギー(太陽光発電、太陽熱発電を含む)の設備の伸びは同3.5倍と著しく、太陽エネルギーに対する投資が風力に対する投資を上回ることが予想される。しかし、太陽エネルギーの再生可能エネルギーの内での発電量シェアは、2010年比3倍に伸びるが、2020年になっても1割に満たない。

図表1 欧州における電力分野の再生可能エネルギーの増加計画(左:設備容量、右:発電量)
図表2:中国の第12次5カ年計画における環境分野の目標
(出所)欧州委員会ウェブサイトより大和総研作成

温室効果ガス削減へのロードマップは2011年6月の欧州連合各国で確定する。またこれと平行して、運輸部門などのセクター別のロードマップが年末にかけて公表される予定であり、計画の具体化が注目される。

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