2011年06月01日
サマリー
SRIファンドは、投資プロセスに環境・社会・ガバナンスから成るESG要因も加えることで、企業の成長性やリスク等を多角的に捉え、投資パフォーマンスの向上や社会への貢献等を目指す。しかし、代表的な手法であるネガティブ・スクリーニング等、特定の業種を投資対象から控除することがパフォーマンスの低下を招くことも考えられる。そこで、Eurekahedge*のSRIファンド・データベースからデータの取得が可能であったファンドを対象に、投資対象地域別のパフォーマンスを検討した。
まず、図表1が投資対象地域別の構成比を示したものである。ファンド数、運用資産額のいずれも世界全体を投資対象とするグローバルの比率が高い。また、ファンド数では欧州の比率も高いが、運用資産額では北米と同程度の比率となっており、相対的に欧州のファンドの規模は小さいようである。アジアは、構成比は低いが、2007年末と2010年末を比較するとファンド数と運用資産額の比率がともに高まっている。成長性の高いアジアに投資するファンドが増えている。
図表1 SRIファンドのファンド数と運用資産額の構成比

(出所)Eurekahedgeより大和総研作成
次に、図表2が2007年12月末を100としたSRIファンドのリターン指数の推移を示したもので、参考としてMSCIの各インデックスを併記している。いずれの投資地域でもSRIファンドのリターン指数は株式市場の動きと連動性が高く、2008年のリーマン・ショックを契機とした金融危機による株式市場の急落と、その後の回復の影響を強く受けていることがわかる。ただ、各投資地域を比較すると、少し違いがみられる。特に、欧州は株式市場に比べると金融危機時のリターン指数の下落幅が小さく、2008年初めも株式市場よりも下落が限定的となっている等、株式市場全体よりも下方へのリスクが抑えられているようにみえる。また、アジアはグローバルや北米と比べても、株式市場との連動性が非常に高く、SRIファンドは株式市場全体へのパッシブ運用と同様のリスク・リターン特性を持っているようである。ただし、ここでは各地域に投資するファンドの平均リターンを指数化しており、ファンドによってパフォーマンスが大きく異なっていることも考えられる。
図表2 SRIファンドのリターン指数の推移(2007年12月末=100)

(出所)Eurekahedge、MSCIより大和総研作成
そこで、投資地域を北米とする個別ファンドを対象に、2009年4月から2011年3月までの24ヶ月リターンの年率換算値で度数分布を作成したのが図表3である。この間のMSCI North America Indexの年率リターンが32.2%であったのに対し、SRIファンドの平均リターンは30.1%で大きな違いはない。しかし、個別のファンドではリターンが10%に満たないファンドや、40%以上のリターンを獲得したファンドがあるなど、投資地域が同じであってもリターン水準が大幅に異なっている。これは、運用方針の違いや、投資手法の違いなどから生じていると考えられる。SRIファンド全体は株式市場と連動性が高いが、個別のファンドでみるとリスク・リターン特性は大きく違うようである。
図表3 投資地域を北米とするSRIファンドのリターンの度数分布

(出所)Eurekahedgeより大和総研作成
*Eurekahedgeのデータは、各運用機関及び外部の情報を元に作成しております。Eurekahedge及びその関係者は情報の正確性、完全性、市場性、仮定、計算などについて保証を行っておりません。情報の閲覧・利用者は、データの使用に際して、情報における全てのリスクを認識し、負う必要があります。Eurekahedgeではデータ及び情報に基づくいかなる理由の損害に関しても責任を負いかねます。データは、特定のファンド、有価証券、または金融商品、会社への投資に関する勧誘或いは販売勧誘を構成するものではなく、また、独立、金融機関、専門家としての助言として解釈されるべきではありません。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
GX-ETS本格稼働で強まるJ-クレジットの早期確保への動き
市場に依存しない、上流(創出)関与と相対・長期での確保が鍵
2026年02月05日
-
人的資本可視化指針改訂で期待される経営戦略と人材戦略の深化
期待される開示の負担軽減と比較可能性の向上
2026年01月23日
-
バイオマス発電の質による選別と高付加価値化への潮流
BECCS・国内資源活用という新たな方向性
2026年01月21日
最新のレポート・コラム
-
IOSCOの2026年作業プログラム
グローバル化とデジタル技術の進化がもたらす構造的リスクに対処
2026年03月13日
-
財政安定化の条件:ドーマー条件成立だけでなく、PB黒字化が重要
財政シリーズレポート4
2026年03月13日
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
大和のクリプトナビ No.8 東証が暗号資産トレジャリー企業への対応を検討か
トレジャリー企業を巡る直近の動向と海外制度の整理
2026年03月12日
-
続・アクティビスト投資家進化論
~今後アクティビスト投資家に求められる「価値創造力」~
2026年03月13日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
-
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
-
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日

