サマリー
◆米国のHECMは高齢者の経済的困難の緩和を目的とする公的なリバースモーゲージである。住宅資産(ストック)をフロー収入に転換することで、高齢者が住み慣れた自宅で活力ある暮らしを送ることができるようすることをHECMは目指している。
◆HECMの貸付件数は2000年代に入り順調に増加したが、サブプライム・ショックによる金融危機の中で、住宅の差し押さえ回避策に利用されたこと等により2009年度にピークに達した。
◆2009年度以降は、既存の住宅ローンや債務返済にHECMを利用した借入人のデフォルトが増加し、FHA(連邦住宅庁)に譲渡される住宅の増加や住宅価格の下落、融資期間の長期化等を背景に、融資保険を担っているMMI基金の財政が悪化した。その後、HECMは財務安定性の観点から累次の見直しが行われ、MMI基金の健全性は改善が見られた。
◆だが、2014年度以降には、固定資産税・住宅保険料の滞納や居住要件を満たさなかったことを理由としたデフォルトが増加している。融資のパフォーマンス分析を進めると同時にデフォルトを抑制し、高齢者の生活の安定に繋げる制度とすることが不可欠である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国401(k)プランにおけるターゲット・デート・ファンド導入の効果
若年層の株式比率上昇に伴う資産拡大と株式直接投資への波及効果
2025年08月13日
-
ISSが取締役兼務数基準の導入を検討
取締役の兼務が多すぎる場合、選任議案に反対投票推奨へ
2025年07月31日
-
大和のクリプトナビ No.3 ビットコインのポートフォリオ組入れ効果
GPIFの基本ポートフォリオをもとにした検証
2025年06月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日