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公的年金は何を目指すのか?

2008年12月17日

菅原 晴樹

11月4日社会保障国民会議の最終報告が取りまとめられた。その中で、「高齢期の所得保障」として、「公的年金」が柱になるとし、公的年金制度の長期的安定・給付水準の確保は重要な課題との認識を示した。さらに年金とともに医療・介護、少子化対策について、その機能を充実・強化した場合の追加的公費負担として消費税換算で、2025年に「6%程度(約24兆円)」の財源が必要との試算結果を示した。


続いて、11月27日厚生労働大臣の諮問機関である「社会保障審議会年金部会」が「議論の中間的な整理-年金制度の将来的な見直しに向けて」をまとめ、厚生労働省から公表された。公的年金制度については2004年改正により「百年安心」できる持続可能な制度への見直しが図られた。今回の中間報告では2004年改正後に指摘された課題として8項目について議論を進め、次期制度改革に向けた整理を行った。その中で、低年金・低所得者に対する基礎年金の拡充策を検討する上で、「税方式と社会保険方式のポリシーミックス」を打ち出し、具体的方策として「最低保障年金」、「保険料軽減支援制度」および「単身低所得高齢者等加算」が、「税方式」とともに提示された。これらの施策を実現するためには、追加的費用が必要となる。すなわち、保険料財源で対応する場合は、2004年改正の財政フレーム(保険料の上限設定:2017年以降、厚生年金保険料18.3%、国民年金保険料16,900円)を変えざるを得なくなる。また、税財源で対応する場合は、消費税を含め税制の抜本改革を通じた安定財源の確保が必要となる。さらに、保険料の財源確保策として、標準報酬の上限(現在:62万円、健康保険制度の上限は121万円)の見直しも示されている。


いずれにしても、医療・介護を含めた一連の社会保障制度改革を実現するには、国民は、社会保険料の一層の負担を強いられるか、消費税などの増税を強いられるかである。「消えた年金記録」、「標準報酬の改ざん問題」等、国民の年金制度に対する不信感、不安感は高まるばかりである。国民の信頼を取り戻し、不安感を払拭し、世代間の納得を図るためには、公的年金制度の実態を正確に開示し、是々非々の議論をすべきではないかと思う。


他方、企業年金分野では、10月30日「新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議」で示された「生活対策」において、金融資本市場安定対策の一環として企業型確定拠出年金における個人拠出(マッチング拠出)の導入が明記された。これは2001年確定拠出年金法が施行されて以来、厚生労働省をはじめとして、経済団体等から要望されていた案件である。そして、2009年度与党税制大綱原案に、拠出限度額の引き上げ(企業年金を導入していない企業の場合、現行の月額46,000円を51,000円とする)とともに、拠出限度額の範囲内とはいえ個人拠出(マッチング拠出)が織り込まれたため、来年度税制改正で認められる見通しである。これにより、確定拠出年金制度の設計が弾力化される。


また、確定給付企業年金制度に関しても、今年度規制緩和が行われた。さらに厚生労働省企業年金研究会で確定給付・確定拠出の混合型年金の検討を進めており、適格退職年金の廃止期限の2012年3月に向けて、適格退職年金実施企業の移行受け皿の選択の幅が広がることが期待される。


老後生活に必要かつ不可欠の公的年金、さらに企業年金の今後の動向には目を離せない。

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