魅せる持株会社化

~持株会社化で描く成長戦略~

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2017年10月25日

  • データアナリティクス部 主任コンサルタント 耒本 一茂

企業経営は激動の時代を迎えており、同業種との競争に勝つために経営戦略を策定するだけでは通用しない時代に突入している。そのような時代で、経営者が第一に考えるべきことは、将来における本質的な競争相手を見極めた上で経営戦略を描くことである。異業種の新技術や動向をもとに未来を予測し、異業種参入の対応策や業務・資本提携等のアライアンス戦略を活かした経営戦略が求められる。多くの企業は成長シナリオや経営課題への対応策をそこに描く。例えば、ブランド戦略、M&A戦略、経営効率化、スピード経営、意識改革等の様々な要素を盛り込み、業績拡大や収支改善等の計画を示せば市場からの評価にもつながる。しかし、経営戦略を迅速に実行するための組織戦略まで検討している企業はあまり多くない。どんなに優れた戦略があっても、実行できない組織であれば何の意味もない。日本企業の多くは、企業が成長し市場も成熟すると、既存事業を優先しリスクを回避するため保守的になり、新しいことにチャレンジできない「大企業病」になる。これを打破するためには、実行力を高めるための改革をする必要がある。


企業経営の抜本的改革には、経営戦略を策定するだけではなく、経営戦略を実現するための組織戦略が有効となる。すなわち、経営戦略と組織戦略をセットにした「成長戦略」を描くことがその第一歩となる。そして、この組織戦略に最適な仕組みが「持株会社化」であり、企業体質を改善するための特効薬として期待される。

持株会社化で描く成長戦略のイメージ

持株会社化により、持株会社、各子会社とも役割が明確化し、事業責任が徹底され迅速な意思決定が可能となる。また、グループ全体として最適な戦略を立案できるようになるだけなく、事業の買収や売却、再編などM&A等も含めた戦略も可能となる。大企業病への有効な特効薬といえるが、効果的に組織を変革するための処方箋が必要になる。経営戦略と現状組織と企業が抱える課題をもとに「事業別、機能別、地域別」の配合比率を検討し、企業特性に応じた最適な組織戦略とすることが重要である。

組織設計のポイント

持株会社化による変革の副作用にも配慮する必要がある。持株会社化の最大のメリットは、急激に変化する市場に対応できるスピード経営にあるが、巨額の投資を要する新規事業やM&A等により損失発生リスクが高まるデメリットもある。つまり、多角化を検討する際には、小さな失敗をしてもよいが、大きな失敗をしないような仕組みが求められる。迅速な意思決定とチャレンジできる環境を整備しつつ、事業からの明確な撤退基準を設けることを怠ってはならない。


そして、持株会社化の「魅せ方」が重要となる。各社のプレスリリースでは持株会社化の目的のみが示されるケースが多いが、中期経営計画等で経営戦略との相関を示し、業績拡大と収支改善への期待効果を示すことが重要となる。


大和総研ではこれまでに数多くの持株会社化の支援を行ってきました。持株会社化をご検討の際には、お気軽にご相談ください。

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