2014年07月02日
3月決算の上場会社が定時株主総会を終え、役員の改選・担当替えとともに、組織・人事にも一部手が加わったことと思う。当然のことであるが、会社内の組織にはそれぞれにミッション(業務分掌)があり、事業部門には営利活動のための、管理(間接)部門には営利活動や経営を支援するための業務が定められている。そして、すべての組織がミッション通りに有機的に活動すれば、会社全体での一年の計画は予定通りに完了するはずである。そのために、経営陣は年度予算策定・実行に際して、合理的なシナリオを描き、必要に応じて組織を変更し、組織に与えるミッションを修正する判断をするのである。
特に、もう一段高い成長ステージを目指すときや、外部環境が変化するなどして経営の大胆な変革が必要なときのように、これまでの経営とは非連続的な展開が必要な場合には、経営陣は新たな戦略・ビジョンを策定することになる。そして、策定された戦略やビジョンに沿って比較的大きな組織改編が伴うことはよくあることである。
さて、こうした大きな変革を必要とするとき、会社の向かう方向を検討すると同時に組織についても、机上でのシミュレーションをして最適解を見つけ出すことになる。
ところで、検討をしていく中で自然と制約条件を課してしまっていることはないだろうか。例えば「社員が育っていない(から組織に権限を与えられない)。」、「前の経営陣の方針を否定することになってしまう(から選択肢から外そう)。」、「これまでの企業文化には合わない(ので抜本的な変革は無理である)。」などといった暗黙の前提条件が、未来志向で経営を変革するに際してでさえ、優先順位の上位にあったりしてはいないだろうか。
どうしても社内資源(人材)だけでは、長く培ってきた企業文化や風土、考え方、実在の役職員の印象を、最初に考えてしまいかねない。将来の戦略・組織を考えるにあたって、「成熟部門中心の役員構成で成長部門の議論をしていけるのか?」、「取締役会で、売上の過半を占める海外事業展開について密度の濃い議論ができるか?」、「企業を買収した際の管理体制が整っているか?」などの疑問を素朴に投げかける役割の人材がいるだろうか。
実は、社内事情を知りすぎていない第三者にこそ、この役割がふさわしい。
戦略を実行しやすいと思える組織体制を設計すること、組織が活性化するために与える権限と責任にバランスをもたせること、そして経営陣は熟慮の末に決断した組織体制に自信を持って経営し、モニタリング、そして緩やかな調整を繰り返すことが重要である。
この6月の定時株主総会で、近畿日本鉄道株式会社や大日本スクリーン製造株式会社のように持株会社体制移行などグループとしての組織再編を決議した会社がある。新しく作るグループ組織を活用して、グループの次の成長につなげられるかは、経営陣の決意、各組織の連携、そしてモチベーション向上策によるところが大きい。
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