2015年10月15日
海外移住先としてアセアンの存在感が増している。一般財団法人ロングステイ財団が日本人を対象に行った調査によると、2014年の長期滞在希望先トップ10のうち5ヵ国・地域をアセアン諸国が占めている(図表1参照)。特にマレーシアは、タイ・ハワイ・オーストラリアを抑え、9年連続で日本人が住みたい国・地域1位に選ばれている。

先月、マレーシア政府観光局を訪問する機会があり、ビザ発給業務の担当者へ日本人がマレーシアを海外移住先として選ぶ理由を尋ねたところ、概ね以下の5つであるという。
1. 温暖な気候
赤道付近に位置するため、一年を通して温暖で過ごしやすい。
2. 物価が安いうえに、日本食を入手しやすい
日本と比べて約1/3程度の物価であるため、年金のみでも日本より高い水準の生活を送ることができる。また、日系企業であるイオングループだけでも60店舗以上あることに加え、日本食レストランも多く、他国と比較して日本食へアクセスしやすい。
3. 親日的であり、比較的治安が良い
マハティール元首相が1981年に提言したルックイースト政策もあり、世界有数の親日国家である。また、マレーシアはアセアンの中でも比較的治安が良いとされている。
4. 税制面での優遇
マレーシアには住民税・相続税・贈与税などがないため、税制面において日本より有利である。
5. 長期滞在用ビザの存在
マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)と呼ばれる長期滞在用のビザがあり、一定額の金融資産及びマレーシア国外からの定期収入を証明できれば、10年間の滞在が可能になる。また、10年後に更新することも可能。
担当者の話では、とりわけMM2Hの存在がマレーシア人気に火をつけたとのコメントがあった。2014年におけるMM2Hの取得者数国別ランキングでは、日本は中国に次いで2位となっている模様である。
このMM2Hを簡単に紹介する前に、先ずはアセアンの3ヵ国における長期滞在ビザ及び永住権の概要を記した下図表をご参照いただきたい。

図表2に示した3ヵ国に限らず、そもそも海外へ移住するためには、各国において金融資産などの経済条件をクリアしたうえで、長期滞在ビザや永住権などを取得する必要がある。マレーシアのMM2Hの場合は、経済的な要件のみ満たせば、国籍や年齢等に関係なく誰でも取得できることが強みと言われている。
MM2Hは、退職者等がマレーシアに定住し、マレーシア経済に活性化をもたらすことを期待されて策定された背景もあり、MM2Hを取得すると事業を立ち上げる権利等を与えられることも特徴の1つである。それに加えて、ビザの有効期間内の滞在及び出入国は自由に行うことができるため、人によっては冬季期間のみ温暖なマレーシアで過ごすという選択肢もとることができる。上述したマレーシアの5つの魅力ポイントや、このMM2Hのメリットを活かし、海外移住を将来の選択肢として検討してみるのはいかがだろうか。
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