2013年01月17日
店舗面積と店舗数

百貨店は、中国の多くの人々にとって、思い出多い場所である。改革開放前まで、中国の消費を牽引する役割を担ってきた。同時に、ファッションリーダーとも言われてきた。だが、近年、百貨店業界は開業と閉店を繰り返し、今や変革期を迎えている。図1が示している通り、中国国内の百貨店の店舗数は2009年にピークに達し、その後いったん落ち込んだが、11年には回復している。一方、営業面積はこの5年間で順調に伸びている。都心にある営業面積の比較的小さな店舗や、立地条件のよくない店舗を閉店し、経営資源を集中する動きが見られた。
2012年5月、上海の淮海路にあった老舗の上海第一百貨店淮海店が19年間の営業の幕を閉じた。代わりに、跡地に自動車販売代理店ができた。淮海路商圏は、昔から南京路、四川北路と並んで上海三大商圏のひとつで、第一百貨店がそこに乗り込んだのが1993年だった(同時期に進出したのが華亭伊勢丹であるが、2008年に閉店)。その時に発表した閉店の理由は、売り場面積が小さく、商圏全体の変化に追いつくことが出来なくなったということだった。
中国の百貨店業界が変革を求められる理由は、以下の2点と考えられる。

ここ10年、中国では都市開発に伴って、人々の都心離れが起きている。図2に示す通り、上海では、2002年からの10年間で、総人口は実に倍近くになったが、都心部(都心8区)の占める人口の比率はここ10年間で約16%ポイント減少した。それに伴って、郊外の商圏が盛んに開発されている。商業区域だけではなく、病院、学校まで整備されて、郊外に住んでいる人々にとって、市の中心部まで、足を運んで、生活用品を揃える必要がなくなっている。2012年9月に上海市商務発展研究センターが発表した「2011~2012上海消費者意向調査報告」によると、上海の消費者が最も好きなショッピング商圏は、徐匯閔行の居住区に近い徐家匯商圏である。他にも、浦東、中山公園、五角場などの名が挙げられている。特に、中山公園では、最近、地下鉄開通の利点を生かして、地下商店街の開発が進んでいる。この地域に多くの日本人が住んでおり、日本人顧客を開拓するため、日系の飲食店が多く開業している。
2.メイン消費者の変化
団塊世代の定年退職に伴って、中国の消費主体は80年代、90年代生まれといったゆとり世代となりつつある。これらの世代の特徴は、その多くが郊外(通勤時間1時間以上)に住み、インターネット利用率が高いことにある。郊外に住むため、平日は、都心で買い物をすることが少なく、休日も、家の近くのショッピングセンター(SC)などで必要な品を揃えるかネットショッピングを利用することが多い。従来の都心の百貨店の集客力が劣るのも当然の話である。
売り上げ推移

外部環境の変化に伴い、百貨店自体が変革を求められている。中国の百貨店にはブランド力、物流配送とアフターサービスという3つの強みがある。最近、それらの強みを生かして、変革に取り組む企業が増えている。都心部にある売り場面積の小さい店舗を閉店し、経営資源を集中し、郊外に進出し、街づくりや周辺住民の生活習慣を配慮した店作りを進めている。さらに、リアル店舗と連携して、ネットショッピングサイトを開く企業も増えている。実際に店があるため、ネットで買った商品のアフターサービスを店で受けることが可能となった。今後、百貨店は、ますますネットショッピングとの連携を強めていくと考えられる。老舗の百貨店は、社会から新たな役割を期待されていくものと思われる。
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