2012年01月26日
近年、日本も含めた外国企業によるサービス業の中国進出ブームにより、中国の大都市では、日本と同様のブランドを目にすることができるようになった。
例えば、飲食サービスでは、マクドナルドやケンタッキーが1990年前後に中国進出を果たし、既にマクドナルドが1300店、ケンタッキーでは3000店を上回る大規模な展開を見せている。スターバックスも1999年の中国進出から、2011年の500店達成まで10年以上をかけて展開してきた。また飲食チェーン展開の手法が外資企業に持ち込まれてからすでに20年が経ち、火鍋系の中国系チェーンも大きな存在感を見せている。
これら大手企業は、設立後から既に一定の期間を経て、FC展開の管理システムや従業員の教育制度、消費者意見の取り込みや奨学生のための教育基金設立など、積極的に中国社会とのかかわりを構築する仕組みを整備してきている。また現在の若年層にとっては、子供の頃からの食の体験として定着しており、サービスの基準として十分に認知されている。
一方で日本食は、中国で“衛生的”で“健康にも良い”といったイメージの良さから、一定の認知度を確保している。確かに大都市の優れた日本食レストランでは、細やかな指導により、衛生的な空間で安全・安心な食品が提供されており、中国の人にも人気がある。しかし、これまでのところ大規模に展開できている日本企業は限られているようだ。日系サービス業が中国で大規模展開することは困難なのであろうか。
これまで飲食業を例に挙げたが、日本のサービス業が中国で大規模展開するためには、欧米企業のサービスとは異なる優れた自社特有のサービスを、中国社会に具体的に広くアピールしていく姿勢が求められよう。その目標達成に向けては、サービスの質を決める優れた人材の確保が、時間を要する重要な課題となる。現在、中国への進出戦略は、拠点やサービス内容、スケジュールなどが中心に据えられることが多い。また、短期的には幹部候補生の育成やスタッフの研修などの制度構築、運営のマニュアル化をすることはもちろん必要である。
しかし優れたサービスの根底にある自社の理念や精神が中国現地において受容され、さらに中国流に解釈されることが中国社会へ浸透を意味する。自社の理念・精神が中国においてどのように理解されるかを、具体的に中国国内の展開を担っていく現地人材と議論しながら自社の中国版のサービス方針に再構築することが、日系サービス業の展開においては一つのポイントになると思われる。
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