最近、中国の若者の間で最も流行っている言葉のひとつに「今天,你“织围脖”了吗」?」がある。直訳すると、「今日、あなたはマフラーを編みましたか?」という意味だが、実は、「围脖(wei bo)= マフラー」は「微博(wei bo)= ミニブログ」と同音で、「今日、あなたはミブログをやりましたか?」の意味である。マフラーとミニブログを掛けた小洒落た言い回しだ。

中国では、2010年頃よりミニブログが急速に発展してきている。現在、TwitterやFacebookが気軽なコミュニケーション媒体として世界中に普及しているわけだが、中国においては両者とも遮断されているため、いわばそれらの「代替品」として中国のミニブログを活用する人々が急増している。例えば、最も人気のあるミニブログはインターネットポータルの「SINAミニブログ(新浪微博)」で、ユーザー数は2011年4月末時点で1.4億人に達し、2011年末には2億人のユーザー獲得を目標としているとのことである。「新浪微博」以外にも、「騰迅QQ」、「網易NETEASE」、「捜狐SOHU」といった大手ポータルサイトが続々とミニブログサービスに参入してきており、ミニブログ総利用者数は2.2億人を超えた。いまや「ミニブログ戦国時代」の観である。

140字以内で書いた短いメッセージを瞬時に伝えることができるミニブログは、一般的なブログよりも敷居が低い。ミニブロガー達は、いつでもどこでも携帯電話やパソコンを使って、生活上の雑感や社会的な事件に対する意見をミニブログ上に気軽に投稿し、他の大勢のミニブロガー達とリアルタイムで情報を共有することができる。ミニブログを通じて、ひとつのミクロ社会が中国で形成されているともいえる状況だ。

中国のミニブログの現状及び今後を考察すると、以下の4点を指摘できる。

1. 企業活動での活用

企業にとってミニブログは、ネットワークマーケティングの重要な手段となりえる。例えは、「中糧集団」や「東方航空」のような有名企業では、企業ブランド活動や新製品の宣伝などにミニブログを活用している。一方、このような企業としての公式な活動だけではなく、幹部社員から一般社員に至る個人が自発的に、自分のミニブログを利用して、自社の企業文化の紹介、業界や企業の最新動向の提供(機密情報は除く)、人材募集などを頻繁に行っており、日本人の目から見れば驚きに値するのではないだろうか。これは、組織対組織よりも、人間対人間の関係を重視する中国ならではの現象ともいえ、ビジネスチャンスの拡大に一役買っている。

2. 政府機関による活用

ミニブログを活用する政府機関も多い。ある調査によると、中国では行政関係のミニブログアカウントが2,400あまりに上り、ミニブログを通じた行政関連情報の公開が新たな潮流となりつつある。中国の一部地方政府機関では、政府・市民間の意思疎通が希薄なため、大衆の信任を得られないという問題に直面しており、ミニブログの活用で状況を改善しようとする動きが顕著となっている。例えば、山東省済南市公安局は、2010年8月に「新浪微博」内に開設したミニブログ「済南公安」の中で、よりよい公共サービスの提供を目指すため、交通警察のサービス、パスポートの申し込み、戸籍の管理等の問題に関して、市民たちと熱い議論を繰り広げている。

3. ミニブログ有料化と新たなビジネスへの拡大

ミニブログユーザー数の拡大に伴い、中国のミニブログは有料サービスに移行されようとしている。また、ミニブログ上に広告を掲載し、広告料を徴収する仕組みも形成されつつある。さらに上述の「新浪微博」は、中国女性向けEコマースの大手である「麦考林(m18.com)」(米国上場)へ資本参加した。これにより、ミニブログとEコマースとのコラボレーション型ビジネスも今後展開されていくことになるであろう。

4. ミニブログの社会的価値

社会的価値の観点からいえば、ミニブログは社会の民主的開放と、社会に集う人々の精神面のバランス維持を促進するためのひとつの重要な手段となる。ミニブログ時代には「人々は皆記者になれる」と言われている。つまり、これまで沈黙を余儀なくされてきた人々は、生活上の雑感や社会事情に対する意見を自由に自己表現できるようになる。ミニブログが中国一般市民に一定の意見表明の場を提供し、透明性の高いコミュニティを創出していることは紛れもない事実である。

ただ、日本を含む世界は、ネット社会の恩恵に預かっていると同時に、その負の領域にも直面している。中国においても全く同様である。つまり大多数の市民は、ネットを通じて発信された情報の真偽を確かめるための十分な資質・能力を持っているわけではない。よって、ネットに公開される誤った情報・悪質な情報によって、社会全体をいたずらに混乱させるような事態が生じる可能性もある。そのことを十分に念頭に置きつつ、ミニブログなどの媒体に接するべきであろう。

最後に、ミニブログの登場により、テレビや新聞など画一的でフィルターのかかった情報を発信してきた従来型メディアは、将来その存在意義が低下していく可能性もあることを付記する。


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