2010年03月03日
大和総研は、2月24日に一橋大学大学院 国際企業戦略研究科および中国の大手法律事務所である大成律師事務所との3者共催で、中国セミナー「躍進する中国のベンチャー企業と創業板~対中投資戦略の将来性を探る~」を一橋記念講堂において開催した。
当日は、事業法人、機関投資家などの担当者や大学関係者等300名超が来場し、会場は熱気に包まれた。
中国のベンチャー企業をとりまく環境は、2008年のリーマンショックを跳ね返すほどの勢いがあり、昨年10月30日、中国の深セン証券取引所で中国版ナスダックとして新設されたベンチャー企業向け市場「創業板」がスタートした。初日に上場した28社の初値は全社公募価格を上回るホットな状況であり、28社の調達金額は154億元(約2160億円)、2010年1月までに上場した50社の総調達金額は304億元(約4260億円)(※1)であった。2月26日現在で上場企業数は58社、時価総額は2324億元(約3兆2千億円)(※2)となっており、上場企業数185社(2月24日現在、※3)の東証マザーズの時価総額1兆4403億円(※4)を上回り、東証2部上場企業の時価総額3兆5083億円に迫る勢いである。
セミナーの講演内容は以下の通りであった。
(1)創業板の経営幹部である?博士から日本で初めて「創業板市場制度と中国のベンチャー投資の現状」と題して創業板市場の制度設計と上場会社の状況、外資によるベンチャー投資について説明。日本で初めての対外的な講演であり、なかなか情報が取りづらい各種データ等について直接聞くことができたとの出席者の高い評価を得たことが印象的だった。
(2)清華大学の施教授から「中国の証券取引所および証券監督管理委員会の機能」と題して、中国の証券取引所の制度と上海および深セン証券取引所の比較、証券監督管理委員会の機能について講演。中国証券取引所設立の経緯、1986年9月の静安証券業務部からはじまるその発展の歴史に注目が集ったようだ。
(3)大和総研産学連携調査部の謝主任研究員からは「中国のベンチャー企業とこれからの対中投資戦略」と題して、日本企業が戦略的投資の対象として中国のベンチャー企業をどのように捉えるかについて、中国ベンチャー企業発展史、ベンチャーキャピタル投資やベンチャー企業のタイプ別分類、日本と関連の深い事例の紹介など、幅広いテーマを説明。日本でも有名なBaidu(百度)やAlibaba、味千ラーメンなどを取り上げた内容は非常に興味深く、期待以上であったとの声が多かった。
(4)大成律師事務所の問パートナー弁護士からは、「ベンチャー投資の法務戦略」と題して、外資系PE(プライベートエクイティ)ファンドの投資手法やその法的検討、中国におけるPEファンドの存在形態についての内容を講演した。非常に濃い内容のため40分間では時間が足りないと感じる出席者が多く、再度のセミナーを希望する声もあった。
今回のセミナーでは、来場者の約7割がアンケートに回答し、中国のベンチャー企業投資というタイムリーなテーマに対する企業の関心の高さを改めて確認した。大和総研としては、今後も日本企業の中国ビジネス展開を支援するための各種情報提供・コンサルティングサービスを継続・強化していきたい。
(※1)http://www.szse.cn/main/chinext/scsj/sctjyb/
(※2)http://www.szse.cn/main/en/ChiNext/chinextdata/
(※3)http://www.tse.or.jp/listing/companies/index.html
(※4)『東京証券取引所 月末時価総額(2010年2月)より』
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