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ふるさと納税の拡大と課題

~自治体は積極的に情報公開を~

経営コンサルティング部 主任コンサルタント 枝廣 龍人

ふるさと納税が拡大している。総務省の発表によれば2015年(1月1日~12月31日)の寄付総額は1,471億円となり、前年の341億円から4倍以上の規模となった。ふるさと納税の仲介サイト「ふるさとチョイス」を運営する株式会社トラストバンクの推計によれば、2016年の寄付額は2,600億〜2,800億円程度となっている見込みである(図表1)。こうした拡大の背景には、税額控除枠の倍増とワンストップ特例制度の導入、「ふるさとチョイス」「さとふる」など民間事業者による手続きの簡素化、そしてテレビCMや雑誌、口コミなどによる認知度の向上がある。

ふるさと納税の寄付総額

こうした急速な市場の拡大に伴い、様々な問題や制度のゆがみも表面化している。現在指摘されている主な問題点には、少なくとも次のようなものがある。


・高価な返礼品や換金性の高い返礼品による競争の過熱
・特産品資源が豊かな地域とそうではない地域との不公平感
・高所得者ほど多額の減税を享受できる不公平感
・行政サービスの受益者と納税者が一致しなくなることの不公平感
・官製需要の創出による従来の生産販売活動への悪影響
・「ふるさとに対する無償の応援」という制度本来の主旨からのかい離


こうした多くの指摘を受け、2017年4月1日、総務省から通知が出されるに至っている(図表2)。通知に法的強制力はないが、明らかにこのガイドラインに反する自治体には今後、総務省から直接の指導が入る可能性があり、少なくとも、返礼品の還元率競争は遅かれ早かれ沈静に向かうと思われる。

総務大臣通知

さて、こうした通知によって、ふるさと納税制度が無くなるわけではない。むしろ、一部のルールが明示されたことで、制度利用がさらに拡大する可能性もある。各自治体においては、ふるさと納税に対して賛成(積極参入)の立場をとるにしても、反対(静観)の立場をとるにしても、市民と地域生産者からの理解を得ながら、外部環境の変化に合わせて、適切に検討を進めることが重要である。そしてその検討内容は、行政運営に支障をきたさない範囲内で市民に公開することが望ましい。これは、市民や生産者の理解と協力を得ることのほか、公正な手続きを担保するためである。たとえば、次のような点については、公開することが望ましいと考えられる。


・ふるさと納税制度を活用する/しないにあたって、誰がどのような検討を行ったか
・返礼品や返礼品の生産者は、誰がどのようなプロセスを経て選定したか
・地域事業者間の公正な競争を阻害しないために、どのような措置を講じているか
・返礼品の準備等に要した費用はいくらか
・寄付金はどのように使うか/使ったか


上記検討における適切な手続きや情報公開の範囲については、その自治体が置かれている状況がそれぞれ異なるため、一律に定義することは困難である。ただし、地域経済分析や生産者へのヒアリング、タウンミーティングや市民に対するアンケート調査などは、市民と地域生産者の納得性を高める上で有効な手法と考えられる。
現状のふるさと納税制度には賛否両論があるが、雇用の創造や定住移住の促進における自治体間の競争がますます激しくなるなかで、全国の各自治体はこれまで以上に、他の自治体との差別化が求められると思われる。水産資源や畜産資源に恵まれない地域だからこそ採ることのできる施策もあるだろう。大和総研はこれまで、自治体や企業と連携し、地域経済分析や地域コンソーシアムの運営、経済波及効果の算定などを行ってきた。プロジェクトの立ち上げや市場調査を検討される際には、弊社までご相談いただければ幸いである。

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