2018年11月30日
サマリー
ROEが、投資家から期待される水準を「上回っている」と考えている企業は42.9%である一方、自らが期待するROE水準を「上回っている」と考える投資家は僅か1.7%だけであり、期待する水準を「下回っている」と考える投資家に至っては49.1%にのぼる——(※1)。
いま、投資家と企業との間で、資本コストをめぐる認識にギャップが生じている。なぜ、このような相違が生じるのか。原因のひとつには、企業サイドにおいて資本コストの十分な理解が進んでいないことがあるように思われる。現在、「会計2.0」「CFO2.0」や「ファイナンス思考」といった考え方が注目されてきており、企業経営に関わる人々にとってファイナンスの知識の重要性はますます高まっている(※2)。こうした時勢において、ファイナンスの中核概念たる資本コストの理解を深め、クオリティを高めていくことは、急務である。
本稿は、こうした問題意識のもと、資本コストをめぐる投資家と企業のギャップを分析し、資本コストの理解を阻む要因や、これを解消するための方法を考察する。
(※1)一般社団法人 生命保険協会[2018]
(※2)森川潤[2018]、朝倉祐介[2018]。なお、週刊ダイヤモンドによる調査によれば、同調査に回答した役員のうち84%が、社員には「ファイナンスの概念や投資の評価方法」を理解してほしいと思っている一方、一般従業員において同項目を選択した割合は5%となっており、両者の認識に大きな差があることがわかる(週刊ダイヤモンド[2018]、本稿8貢参考資料)。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
データから学ぶTOB(株式公開買付け)
TOBの拡大が示す、企業戦略の新局面
2025年07月11日
-
日本企業によるM&Aの動向(2023年版)
2024年05月31日
-
日本企業によるM&Aの動向
2023年05月25日
関連のサービス
最新のレポート・コラム
よく読まれているコンサルティングレポート
-
2025年6月株主総会シーズンの総括と示唆
株主提案数は過去最高を更新。一方で一般株主の賛同は限定的。
2025年10月31日
-
中期経営計画の近時動向 <2025年10月>
欧米の中期経営計画開示動向とその背景
2025年10月31日
-
買収対応方針(買収防衛策)の近時動向(2025年9月版)
「同意なき買収」時代における買収対応方針の効果と限界
2025年09月24日
-
中国の「上に政策あり、下に対策あり」現象をどう見るべきか
2010年11月01日
-
アクティビスト投資家動向(2024年総括と2025年への示唆)
「弱肉強食化」する株式市場に対し、上場企業はどう向き合うか
2025年02月10日
2025年6月株主総会シーズンの総括と示唆
株主提案数は過去最高を更新。一方で一般株主の賛同は限定的。
2025年10月31日
中期経営計画の近時動向 <2025年10月>
欧米の中期経営計画開示動向とその背景
2025年10月31日
買収対応方針(買収防衛策)の近時動向(2025年9月版)
「同意なき買収」時代における買収対応方針の効果と限界
2025年09月24日
中国の「上に政策あり、下に対策あり」現象をどう見るべきか
2010年11月01日
アクティビスト投資家動向(2024年総括と2025年への示唆)
「弱肉強食化」する株式市場に対し、上場企業はどう向き合うか
2025年02月10日

