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持株会社体制を設計する際に注意すべき論点

—「経営人材の育成」と「権限委譲」のバランス—

2017年12月20日

経営コンサルティング第二部 コンサルタント 花本 昭平

大和総研では、持株会社体制の移行を支援する場合、組織、収支、人事、ガバナンス等の側面から、各社にとってのあるべき持株会社像をプロジェクトの初期段階で検討し、グランドデザインを明確化することとしている。
本稿では、複数の事業を有する上場企業が、グループ経営管理機能以外の全ての機能を事業会社(分割準備会社)に吸収分割した際の論点について考え、実際の現場でグランドデザインに係る検討事項となった、「経営人材の育成と権限委譲のバランス」について紹介する。



経営人材の育成を目的として、持株会社体制に移行する企業は多い。移行に伴い、新たに事業会社の経営者というポジションが創出されるため、これを経営人材育成の機会と位置付けることができる。事業部門のそれぞれがひとつの会社として発足するため、新たな事業会社は、子会社とはいえ相当に大きな規模となる。単純な親子関係の企業グループで、子会社の経営者を経験するよりも、求められる役割・責任は大きくなるものと思われる。


また、持株会社の設計の際に必ず論点になるのが権限委譲である。持株会社に権限を集約することでガバナンスを強めるのか、事業会社に権限を委譲し自立経営を促すのか。先に述べた経営人材の育成を目的とするのであれば、経営者の責任を重くするために、権限委譲をすすめていくという方向で議論が進められる。権限委譲の程度に関しては、原則的には、意思決定による事業への影響の大きさ(重要性)を基準に、持株会社と事業会社のどちらで決裁するのかを決めることになる。


ただ、個別に決裁事項を確認すると、これだけでは決まらない論点がみえてくる。大和総研がご支援したA社は、経営人材の育成を意図して持株会社体制に移行した。そのため、基本的には権限委譲を進めようとしていたが、P/Lに係る内容とB/Sに係る内容で考え方を変えることにした。この決定は、経営トップと事業本部長クラスが有する経営力の差を考慮したものである。


最近ではROIC経営を取り入れ、事業ごとに仮想B/Sを作成し、事業本部長クラスでもB/Sに係る責任を負う事例は見受けられるが、一般的にはP/Lに係る責任のみを負うことが多い。たとえば、業績向上のための営業施策のみに責任がある、というものである。


A社においても事業本部長はP/Lに係る責任のみを負っていた。持株会社体制への移行後は事業本部長を事業会社の経営者に据えることとしていたため、「いきなりB/Sに係る責任まで負わせるのは酷ではないか」という観点から、以下の方針で整理することとなった。


・業績向上のための営業施策などP/Lに係る内容については、事業会社の決裁事項とする。
・資産の移動や借入などB/Sに係る内容については、持株会社の決裁事項とする。
・上記2点を基本方針とし、さらに個別の項目については重要性を基準として、持株会社と事業会社の決裁項目を決定する。


この整理でも、事業会社の経営者は自らB/Sに係る内容を検討し、持株会社に提案・起案を行う立場であるため、経営人材の育成という観点からは十分である、というのがA社の結論である。



あるべき持株会社像を明確にするためには、一般的に標榜される原則論だけでなく、個別企業の状況を考慮し、総合的に判断する必要がある。大和総研は、組織、収支、人事、ガバナンス等に関する専門家としてコンサルティングを行っている。「持株会社体制のグランドデザイン」から検討をする際にはぜひお声掛けいただければ幸甚である。

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