2013年度下期・持株会社導入レビュー

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2014年04月16日

  • コーポレート・アドバイザリー部 主任コンサルタント 真木 和久

2013年度下期(2013年10月~2014年3月)において、「持株会社化」を決定した会社・「持株会社化の解消」を決定した会社がいくつかある。本稿では、それらの背景について考えてみたい。


(1)2月14日に、ベストブライダルが持株会社体制に移行すると発表した。会社分割により、2014年7月1日に、現ベストブライダルは「ツカダグローバルホールディング」に商号変更し、傘下に国内結婚式場運営事業・海外チャペル等運営事業の会社を置く。持株会社体制移行の背景には、国内婚礼事業・ホテル運営事業・海外事業等の事業領域の拡大があり、その目的として、「責任と権限の所在を明確化させることによる機動的な経営と経営資源の適切な配分の確保・経営責任の明確化と迅速な意思決定の実現」を挙げている。


(2)2月25日には、近畿日本鉄道が持株会社体制への移行を発表した。会社分割により、2015年4月1日を目途に純粋持株会社体制をスタートさせ、傘下に鉄道事業及び生活関連事業(不動産事業、ホテル・レジャー事業、流通事業等)を置く。持株会社体制へ移行する目的として、①グループ経営機能の強化、②各事業会社の自立的経営による各事業強化を挙げている。鉄道業界は、阪急阪神ホールディングスや西武ホールディングス等があるものの、持株会社が一般的ではない業界のため、注目される。


上記で見た事例(1)(2)は、グループ内の持株会社化である。つまり、現状のグループ間の会社形態を変えることにより、グループが求める持株会社化の目的を達成しようとするものである。


持株会社化には、グループ内の持株会社化以外に、経営統合としての持株会社化もある。以下では、その事例を見てみよう。


(3)3月25日に、協同飼料と日本配合飼料が、共同持株会社設立による経営統合を公表した。株式移転により、2014年10月1日付けで「フィード・ワンホールディングス」がスタートし、傘下に協同飼料・日本配合飼料を抱える。プレスリリースには、「…本経営統合により、業界最高水準の競争力を実現すると共に、アジアを中心とした海外での生産販売活動の展開・充実を図り、グローバル飼料メーカーを目指します。」と記載されている。更に、「…『経営統合により…目指すべき目標及び期待する効果』…を早期かつ着実に実現するため、3年以内を目途とした合併による完全統合を目指してまいります。」とあるため、早期の合併を志向していることが見てとれる。


持株会社化を決断する会社がある一方、持株会社体制を解消した会社もある。


(4)12月26日に、東光高岳ホールディングスは、持株会社を廃止し、事業会社に移行すると発表した(2014年4月1日に合併)。同社は、2012年10月に、高岳製作所と東光電気の経営統合により、発足した会社である。以下、プレスリリースを一部引用する。「…事業構造の改革に果敢に挑戦するために、当社、高岳製作所および東光電気が持つ経営資源を効率的に集中・再編させ、全体最適化を図りながらシナジーを追求する体制構築が必要であることから、当初の計画のとおりに本合併を実施することとしました。」


(4)の場合、2012年5月22日の「経営統合契約の締結及び株式移転計画」プレスリリースにおいて、既に、2014年4月の3社(HD・高岳製作所・東光電気)合併検討が記載されている。合併に至る過渡的組織として、持株会社を選択したことが見てとれる。


2014年4月1日に、事業会社へ移行した日新製鋼ホールディングスも、同様のケースである。日新製鋼と日本金属工業が株式移転により、2012年10月に持株会社を設立したが、当初の目的通り、2014年4月に、3社合併し、事業会社に移行している。


最近の持株会社のキーワードは、「M&A」と「グローバル化」である。典型的な事例として、日本ペイントの例を紹介したい。


2月3日に、日本ペイントは、シンガポール塗料会社のウットラムを引受先とする約1,000億円の第三者割当を実施すると発表した。同社は、調達資金でウットラムからアジア8か国・地域の塗料事業を取得する見込みである。


また、日本ペイントは、2月21日に、持株会社体制への移行準備開始を公表した。その中で、2月3日に公表したウットラムとの戦略的提携により、グループ売上高は、約5,000億円となり、塗料メーカーとして世界第4位のポジションになると述べている。プレスリリースによると、「…グローバル市場に打って出る『第2の創業』を成し、当社がグローバルペイントメジャーへと成長するためには、適切な経営インフラと具体的な成長戦略が両輪となって機能することが不可欠であると考えるに至りました。」とあり、「持株会社体制」が最適な経営インフラであるため、持株会社への移行を決断したと記載されている。


更に、持株会社体制により、「グループ全体で最適な意思決定を行うとともに、スピード感を持って事業運営・意思決定を実行することにより、事業や地域の成長モデルに応じた『ポートフォリオ経営』を実現いたします。」とあり、持株会社体制への移行は、2014年10月が予定されている。


10年以上に亘り、私どもも数多くの持株会社導入のお手伝いを行ってきた。最近の傾向として、「M&A」や「グローバル化」を加速させる経営インフラとして、持株会社体制を導入する会社が増えているのも、実感としてある。


こういったことを考える際、大和総研も相談先の一つとしてご検討頂ければ、幸いです。

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