2022年09月01日
サマリー
◆2022年6月株主総会シーズンの特徴としては、①株主総会の運営実務のデジタル化の進展、②機関投資家の議決権行使基準等の厳格化、③過去最高の株主提案実施とアクティビスト投資家等による株主提案の大幅な増加、が挙げられる。
◆2022年6月株主総会シーズンの議決権行使結果は、主要企業500社(TOPIX500採用企業)において、①経営トップ選任議案の平均賛成率が前年比1.8ptの大幅低下、②買収防衛策継続議案の平均賛成率が前年比6.1ptの大幅低下となった(なお買収防衛策については上程社数も前年比2社減の4社に留まる)。
◆経営トップ選任議案で機関投資家の反対票が多く集まったのは、不祥事企業、政策保有株式を純資産対比20%以上有する企業、低ROE企業、取締役会の構成で課題のある企業(独立社外取締役1/3未満、女性役員・取締役が不在)である。特に政策保有株式を純資産対比20%以上有する企業の経営トップ選任議案は前年から8.1ptの大幅な低下となった。
◆2023年6月株主総会シーズンに向けては、①経営トップ選任議案に係るISS等のROE5%の基準の適用猶予が見直される可能性があるため、現時点でROE5%未満の企業はROE改善に向けて準備する必要がある。②株主総会資料の電子提供制度が開始されるが、年齢層の高い個人株主の多い企業においては紙媒体での郵送を継続するか検討する必要がある。③株主提案のすそ野がいわゆるアクティビスト投資家だけでなく大手運用会社にも広がっており、従来以上に資本市場との対話に留意する必要がある。④議決権行使助言会社の助言方針・機関投資家の議決権行使方針における、女性取締役の人数基準や政策保有株式の定量基準への対応も求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
アクティビスト投資家動向(2024年総括と2025年への示唆)
「弱肉強食化」する株式市場に対し、上場企業はどう向き合うか
2025年02月10日
-
2024年6月株主総会シーズンの総括と示唆
機関投資家の議決権行使の同質化により議案賛成率は2極化
2024年10月09日
-
買収対応方針(買収防衛策)の近時動向(2024年9月版)
ステルス買収者とどう向き合うかが今後の課題
2024年09月13日
関連のサービス
最新のレポート・コラム
よく読まれているコンサルティングレポート
-
アクティビスト投資家動向(2024年総括と2025年への示唆)
「弱肉強食化」する株式市場に対し、上場企業はどう向き合うか
2025年02月10日
-
退職給付会計における割引率の設定に関する実務対応について
~「重要性の判断」及び「期末における割引率の補正」における各アプローチの特徴~
2013年01月23日
-
中国の「上に政策あり、下に対策あり」現象をどう見るべきか
2010年11月01日
-
買収対応方針(買収防衛策)の近時動向(2024年9月版)
ステルス買収者とどう向き合うかが今後の課題
2024年09月13日
-
サントリーホールディングスに見る持株会社体制における株式上場のあり方について
2013年04月17日
アクティビスト投資家動向(2024年総括と2025年への示唆)
「弱肉強食化」する株式市場に対し、上場企業はどう向き合うか
2025年02月10日
退職給付会計における割引率の設定に関する実務対応について
~「重要性の判断」及び「期末における割引率の補正」における各アプローチの特徴~
2013年01月23日
中国の「上に政策あり、下に対策あり」現象をどう見るべきか
2010年11月01日
買収対応方針(買収防衛策)の近時動向(2024年9月版)
ステルス買収者とどう向き合うかが今後の課題
2024年09月13日
サントリーホールディングスに見る持株会社体制における株式上場のあり方について
2013年04月17日