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役員報酬の質的向上と議決権行使の実質化

風間 真二郎

コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)が適用された2015年以降、株式報酬等の中長期業績連動報酬の導入が加速してきたが、量・質いずれにおいても現状で満足すべき状態とは言えないだろう。解決策に王道はない。地道に量を増やし、質を高めていくのが結局は近道であろう。

本稿では、役員報酬のうち、特に株式報酬を中心に述べたい。まずは、量的な側面。残念ながらCGコードコンプライ率(実施率)が低いものの1つは、役員報酬関係のものとなっている。ほとんどのコードのコンプライ率が9割を超えている中、「中長期的な業績と連動する報酬の割合、現金報酬と自社株報酬の割合の適切な設定」(補充原則4-2①)のコンプライ率は約7割に留まっている(※1)。量的な面をもう1つ。特定譲渡制限付株式の導入企業は約150社に留まる(大和総研調べ、2017年12月現在)。

次に質的な面。2016年以降、税制改正等により株式報酬導入の環境が整備されたのは良いが、税制等の改正点や新旧スキームの比較にスポットが当たり、役員報酬のあるべき姿の議論が置き去りにされているように感じていたが、それは筆者だけではなかったようだ(※2)。特定譲渡制限付株式についていえば、約9割が業績条件のないリストリクテッド・ストック(以下、RS)であり、業績条件を付したパフォーマンス・シェア(以下、PS)は約1割に留まっている(大和総研調べ、2017年12月現在)。どの企業にとってもRSよりPSが望ましいとは言えないが、業績条件の効果を示す研究結果もある(※3)。約9割がRSというのは株式報酬の質の面からはまだまだと言えよう。

質を高める上で、企業は頭を悩ませているが、必ずしもひとりで考える必要はなく外部の力を借りればよい。幸いなことにCGコードやスチュワードシップ・コードのおかげで、機関投資家側も役員報酬について関心は高いと思われる。にもかかわらず、まだ企業と機関投資家のコミュニケーションが不足しているのではないか。機関投資家が知りたい情報が議案に盛り込まれていない役員報酬議案が少なからずあるからである。実際、情報が不足しているため、機関投資家は議案に反対せざるを得ない状況があるようだ。そのような状況の一部ではあるだろうが、議決権電子行使プラットフォームを使うことによって解決できる。一般的な議決権行使書送付による投票の場合、一度反対票を投票してしまうとそれまでである。しかし、議決権電子行使プラットフォームを使うと、反対投票の多い議案について企業は機関投資家に補足情報を発信することができ、その情報に基づき機関投資家も議決権の再行使を行うことができる。企業・機関投資家双方にメリットがある。実は「議決権の電子行使のための環境整備(例:議決権電子行使プラットフォームの利用等)、招集通知の英訳」(補充原則1-2④)もCGコードの中でコンプライ率が低いものの1つとなっている。形式的でない実質的な対応が「議決権行使の実質化」である。議決権の電子行使のための環境整備は「議決権行使の実質化」に貢献するだろう。

このようなことを考え、企業はもっと役員報酬について説明する必要があると思っていたところ、金融庁により「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の2月15日会合で「投資家と企業の対話ガイドライン(案)」が示された。ガイドラインでは、「報酬制度や具体的な報酬額の適切性が、分かりやすく説明されているか。」(3-5 経営陣の報酬決定)と謳われている。CGコード改訂版でどのように反映されるか注目される。

(※1)東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」(2017年7月14日時点)による。後述の補充原則1-2④についても同様。
(※2)「(補充原則4-2①を)一応実施していると整理しつつも、実際のところ、これらの適切な割合を十分に検討しきれていない企業はさらに多いものと思われる。」 商事法務2017.5.25号 石綿学氏他「中長期業績連動報酬・株式報酬の新展開」P11
(※3)「(株式報酬等の長期インセンティブを)企業価値や企業業績向上のためのインセンティブとして機能させるためには、その設計において、株価への連動性だけでなく、株価以外の業績評価指標への連動性を持たせることが重要である」 商事法務2017.11.5号 内ヶ崎茂氏他「経営者報酬における業績評価指標選択の留意点」P32

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