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2016年6月株主総会シーズンのポイント(速報版)

CGコード時代の株主総会におけるキーワードは「株主との対話」と「取締役会の再設計」

経営コンサルティング第一部 主任コンサルタント 吉川 英徳

2016年6月株主総会シーズンが始まろうとしている。本稿においては、2015年6月以降の政府や機関投資家の動き、2016年2月・3月株主総会の動向等を整理した上で、2016年6月株主総会シーズンの動きを見通していきたい。


2015年6月以降の政府や機関投資家等における主なガバナンスの動きを整理したのが図表1である。政府の動きとしては、コーポレートガバナンス・コード(以下CGコード)の適用開始(初年度提出期限は定時総会開催後の6か月以内)(2015/6)、会社法の解釈指針の公表(2015/7)、スチュワードシップ・コード(以下SSコード)及びCGコードのフォローアップ会議の開催(2015/9)、役員報酬に係る税制改正(2016/4)等があげられる。施策の特徴としては、従来の制度整備(改正会社法による社外取締役の実質的な導入義務化、SSコードやCGコード等の策定)から一歩踏み込んだ、実効性を担保する為の実務的な「環境整備」に施策の力点が置かれている。


機関投資家等の動きとしては、前年に引き続き、ROE重視の動きや投資先とのエンゲージメント(対話)を積極化させている。例えば、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がJPX400採用企業に対し、運用委託先の機関投資家のスチュワードシップ活動に関するアンケートを実施している。機関投資家における上場企業との対話についても、GPIF主導で、単なる「形(対話の有無)」だけではなく、「対話の質」も重視されてきていると言える。


議決権行使助言会社の動きとしては、引き続きコーポレートガバナンスに関して厳格化・明確化する方向でポリシー変更が行われている。象徴的な変更点としては、議決権行使助言会社大手のInstitutional Shareholder Services Inc.(以下、ISS)が経営トップの取締役選任議案において総会後に社外取締役が2名未満の場合は反対推奨している点が挙げられる。従来は、社外取締役が未選任の場合に反対推奨を行っていた(2013年導入)。さらに、多くの機関投資家が社外取締役の独立性を重視している点には留意が必要である。


加えて、昨年に引き続き一部のアクティビストが活発に活動している。象徴的な事例としては、「業界再編を旗印に社外取締役の選任を求めた臨時株主総会の開催」、「増配の株主提案の実施」等がある。また、メディア等を通じた意見表明の動きも多い。例えば、「不採算事業の撤退や増配、経営者の世襲制に対する反対」、「監査等委員会設置会社への容易な移行に対する反対」「政策保有株の削減、上場子会社の完全子会社化、株主還元の拡大」等が事例として挙げられる。このような表面化した事例は、全体から見ればごく一部ではある。しかしながら、アクティビストファンドが積極的に株式を取得すると同時に、水面下で対話等を実施しているという話もよく耳にする。企業側としては対話に備えた準備をする必要が出てきている。

2015年6月以降の政府・機関投資家等の主なガバナンスに係る動向

上場企業サイドにおいては、昨年6月以降、「守りのガバナンスのあり方」「監査・会計監査人のあり方」、「大株主と経営陣の関係」、「取締役会と経営陣の関係」等が論点となる象徴的な事案が相次いで発生しており、コーポレートガバナンスの「実質性」が問われる局面となっている。特に、本年6月は3月決算企業においては、CGコードの導入後、初めての株主総会シーズンである。CGコードを踏まえたうえで自社の取締役会をどのようにしていくのか、実質性ある「取締役会の再設計」がキーワードになると考えられる。


実際にそうした流れの中において、2016年2月・3月に株主総会を実施した主要企業(TOPIX500)においても、取締役会の構成等を見直す事例が見られた。図表2は2016年2月・3月株主総会を開催した主要企業(TOPIX500)のガバナンスの変化を整理した図表である。昨年度と比較して、多くの企業が、監査等委員会設置会社への移行や、社外取締役の増員、女性取締役の選任、指名・報酬に係る任意の諮問機関の設置を行っている。各社共に、コーポレートガバナンスの向上に向けて、社外取締役の増員、取締役会の多様性や意思決定プロセスの透明性の確保のための仕組みの導入などの動きがうかがえる。一部企業においては、大幅な取締役数の削減(17名⇒6名)や、独立社外取締役比率を50%(従来は19%)に引き上げ、指名等委員会設置会社への移行を行った事例も見られる。

2016年2月・3月株主総会を開催した主要企業(TOPIX500)のガバナンスの変化

2016年2・3月株主総会の全体的な動向を整理するために集計したのが図表3である。主要企業500社のうち2016年2月・3月に株主総会を開催したのは55社で、687議案となっている。1社あたりの平均議案数は12.5議案(前期比+0.5議案)と増加している。監査等委員会設置会社への移行に伴い、定款変更議案、取締役選任議案(監査等委員含む)や役員報酬議案が増加したことが影響していると見られる。


全議案の平均賛成率は95.1%(前年比+0.2p)と前年比で小幅ながら上昇した。独立社外取締役の複数名選任などコーポレートガバナンス体制が強化されたことに加え、株主還元が全体的に向上した事などが背景として挙げられる。各議案の詳細な分析は後日レポートで公表する予定であるが、全体的なポイントを整理すると以下の4点を挙げる事ができる。

  1. 株主還元姿勢の強化
  2. 増配は26社、配当性向の中位数は35.8%(前期比+3.9p)(母数は剰余金処分案を株主総会に上程した43社)
  3. 監査等委員会設置会社への移行が進む
  4. 集計対象では55社中8社が上程、上場企業全体では累計で500社以上が移行表明
  5. 経営トップの取締役選任議案のポイントは引き続き「ROE」及び「社外取締役数」
  6. 「低ROE(ISSのROE基準抵触)」及び「社外取締役1名」の企業の賛成率が低い
  7. 前年比で賛成率が改善している企業は「独立社外取締役の新規選任・増員」を実施
  8. 低ROE企業において中計公表等の株主との対話実施で賛成率が改善した事例あり
  9. 買収防衛策は非継続が目立つ
  10. 集計対象では2社中1社が非継続。上場企業全体では3月末までに7社が非継続(前年同期は4社)、買収防衛策の設計を全面見直しする事例も

主要企業(TOPIX500)のうち2・3月株主総会開催の議決権行使結果状況

CGコード時代の初の定時株主総会である6月株主総会シーズンに向けた示唆としては、従来の「ROE」や「株主還元」に加えて、「株主との対話」とそれを踏まえた「取締役会のあり方」が一つのポイントになると考える。前述のように機関投資家がスチュワードシップ活動を活発化する中で、企業において「株主との対話」の重要性はより増している。実際に、ISSのROE基準に抵触しつつも中計公表等といった株主との対話を重視した結果、賛成率が改善している事例も見受けられる。


また、SSコード及びCGコードのフォローアップ会議(金融庁・東証)において取りまとめられた「会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けた取締役会のあり方」の意見書では、「①最高経営責任者(CEO)の選解任のあり方(補充原則4-1③、4-3①等)」「②取締役会の構成(原則4-7~9、4-11 等)」「③取締役会の運営(原則4-8、4-10、4-12~14 等)」「④取締役会の実効性の評価(原則4-11)」を論点として挙げている。


主要企業に於いてほとんどの企業が複数名の社外取締役の選任を勧める等最低限の形式的なガバナンス体制は整いつつある。次のステージとして、取締役会の「実質性」が今まで以上に注目される局面となっている。取締役会における独立社外取締役比率が増加するに従って、従来の経営会議の延長線上ではない役割・機能が求められつつある。独立社外取締役が適切に役割を果たしているかなど、6月株主総会においても、取締役会の「実質性」の観点からの株主からの質問などが従来以上に増えることが想定される。


株主総会は株主との対話の最も重要な機会である。無難な受け答えによる形式的な対応で終わることなく、株主の「声」を経営に反映させることによって、ガバナンス等の「実質性」を高める1つの機会として活用し、より強い体質の企業を目指していきたい。2016年2月・3月株主総会の議案毎の分析等については前述したように、後日レポートにて公表する予定である。合わせてご参考にして頂きたい。


(注)2015年6月株主総会の動向については以下のレポートを御参照頂きたい。
2015年株主総会シーズンの総括と示唆

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