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動き出した役員向け株式報酬導入

2016年10月12日

風間 真二郎

2016年4月の税制改正により、本邦においても直接株式を報酬として交付する基盤(特定譲渡制限付株式)が整ってきた。特定譲渡制限付株式は、勤務条件のみで業績条件のないリストリクテッド・ストック(RS)と勤務条件に加え業績条件のあるパフォーマンス・シェア(PS)に分けられる。


各社が役員報酬を設計する際、「報酬を決定するに当たっての方針や手続き」(※1)の設計思想と株式報酬スキームを混同している事例があるように思われる。ある株式報酬スキームを導入すれば、全ての企業がコーポレートガバナンス・コード(CGコード)をコンプライすることができ、逆にその株式報酬スキームを導入しないとコンプライできないというような誤解が一部にあると感じられるからである。株式報酬のペイオフがどうなるかは株式報酬スキームによらず設計による。どのスキームでも業績条件を入れることは可能である。まずはCGコードの主旨に合うよう「方針や手続き」の設計思想を決定することが肝要である。後は各社の状況や役員報酬の設計思想に合うスキームを選択すれば良い。CGコードが株式報酬のスキームについて特定のものに限定しているということはない。


各スキームの特徴に一部触れると、特定譲渡制限付株式は、勤務を前提としており、在任中の株式取得に適した制度である。交付時から役員等の持株が増え、配当や議決権も得られる。直接、株式を取得するためシンプルで理解しやすい。一方、1円ストック・オプション(※2)の場合、退職所得として豊富な実績があり、スケジュール的な制約なく損金算入が可能だ(※3)。退職所得としない場合であっても、権利行使のタイミングを自分で選べるため、他の所得が少ない退職後等に権利行使し、課税所得を分散することができる。したがって、既存の1円ストック・オプションが新しい特定譲渡制限付株式に単純に置き換わる訳ではないと思われる。


大和総研では2016年9月に株式報酬セミナーを開催し、参加企業担当者にアンケートを行った。アンケートでは、特定のスキームに偏ることなく各スキームに一定のニーズがあることが確認できた【図1、導入を検討している株式報酬制度】(※4)。特定譲渡制限付株式の中では、CGコードが謳っている中長期的な業績連動の主旨により合致したPSが選好された。また、役員報酬における課題を尋ねた設問では、「役員報酬の設計思想や報酬構成」が上位となり、枝葉末節でなく、役員報酬改革の中心的課題に悩まされていることが推察される【図2、役員報酬における課題】。


各企業には、役員報酬の設計方針に従い、株式報酬スキームの役割に応じた活用がなされることが望まれる。

図表1:動き出した役員向け株式報酬導入

(※1)コーポレートガバナンス・コード原則3-1に、開示すべき事項として「経営幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続き」がある。
(※2)配当は得られないがその分、ストック・オプションの公正価値は株価を下回り、同じ報酬額であればより多い株数分のストック・オプションを得られ、株式報酬としての経済的な差は特定譲渡制限付株式と1円ストック・オプションではほとんどない。
(※3)特定譲渡制限付株式が事前確定届出給与として損金算入するには原則株主総会から1ヶ月以内に報酬額を確定し、さらに1ヶ月以内に株式を交付する必要がある。
(※4)実際、特定譲渡制限付株式と1円ストック・オプションをどちらも導入し使い分けている企業が複数ある。

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