ドル化とは、自国通貨に対する信認が低下し、ドル等(※2)の国際的に信認の高い通貨が、法定通貨である自国通貨と並んであるいは代わって使われる現象をいう(※3)。ドル化は、政治的・経済的混乱に陥りハイパーインフレーションが起きた国々に良く見られる。中南米ではしばしば起こり、社会主義崩壊後の東欧などでも見られた。1990年代半ばまでのベトナムも「金・ドル経済」として良く知られている(※4)。
では、カンボジアのドル化はどの程度進んでいるのであろうか。実は、どの国であれ、その国に流通する外貨現金の量を正確に把握することは難しい。
下表でいうと、ドル化の程度は、(C+D)÷(A+B+C+D)で見るのが望ましいが、外貨現金(C)がわからないので、代替指標としてD÷(A+B+D)、すなわち外貨預金/M2でその程度を測るのが通例である。


次に、ドル化した経済では、金融政策上、どのような問題点があるのかを見てみよう。
当然のことながら、中央銀行は自国通貨の金利を操作することはできても、外貨の金利を動かすことはできない。ドルの金利を決めるのは、米国の中央銀行たるFedである。ドル化した経済では、中央銀行は金利の決定権を持たない。
しかし、金利を動かせないからといって、金融政策がまったく行えないわけではない。外貨預金に対する預金準備率を変えることによって、外貨の供給量を変化させることができる。実際、カンボジア中央銀行(The National Bank of Cambodia, 以下NBC)はこの操作を行っている。だが、その効果はほとんどない。カンボジアの銀行は恒常的に所要準備の数倍にあたる多額の超過準備(※5)を積んでおり、リーマン・ショック後の2009年初にNBCが外貨の預金準備率を引き下げた時も、さらに超過準備を積む行動をとった。
カンボジアで金融危機が起こったとしても、NBCはドルを発券して流動性を供給することはできない。もっとも、外貨準備を使うことはできる。だが、下表に見るように、外貨準備の増加は外貨預金の増加に追い付かず、カバー率は年々低下している。

Duma, Nombulelo, "Dollarization in Cambodia: Causes and Policy Implications" IMF Working Paper No. 11/49, 2011. IMF, Cambodia: Country Report, various issues.
拙稿、「ヴィエトナムの財政金融」、ヴィエトナム国別援助研究会『ヴィエトナム国別援助研究会報告書・現状分析編』所収、国際協力事業団、1995年
(※2)ドルの場合が多いが、ユーロやかつてのドイツ・マルク等の例もある。その場合も含めて、ドル化(dollarization)と言うことが多い。
(※3)なお、ドル等の外国通貨を自国の法定通貨として使用する「公式的なドル化」もある。たとえば、エクアドルのドル、コソボのユーロ等。
(※4)ベトナムの「金・ドル経済」については、拙稿、「ヴィエトナムの財政金融」、ヴィエトナム国別援助研究会『ヴィエトナム国別援助研究会報告書・現状分析編』所収、国際協力事業団、1995年、を参照。
(※5)所要準備を超えて中央銀行に積まれている準備預金。
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