日本経済見通し:2019年1月

世界経済の拡大を終わらせるのは誰か?

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2019年01月23日

  • 小林 俊介
  • 経済調査部 研究員 廣野 洋太

サマリー

◆世界経済見通しの下方修正が相次いでいる。一部には「2008年の世界金融危機以降、10年以上に亘って続いてきた景気拡大が遂に終わり、早ければ2019年にも後退期に突入するのではないか」との声も上がり始めている。本稿では、景気拡大の持続性を巡り、短期循環的な視点と長期構造的な視点を分解整理しつつ、拡大終焉シナリオのトリガーを引く、最後のカタリストを探る。

◆まず短期循環的な視点から言えば、2018年の世界経済の減速は、2017年の成長加速を支えた特殊要因が剥落した点に求められ、過度な悲観を要するものではない。2019年も減速は続く公算が大きいが、こうした特殊要因や在庫調整要因は、各国経済を景気後退に陥らせるほどには強くない。また、遠からぬ先に2019年の減速要因は再度消失して、世界経済は底入れに向かう公算が大きい。

◆こうした楽観論に影を落とすのが長期構造的な議論である。より端的に言えば、懸念材料の中心は、世界経済に対してより長く大きな影響を与える資本ストック循環であり、その裏側で軌を一にして振幅するクレジットサイクルである。世界経済の資本ストック循環は既に「成熟化」の局面を迎えている。従って、「何かカタリストがあれば」、いつ調整が始まってもおかしくはない。

◆景気後退のトリガーを引くカタリストを予測することは困難を極める。しかし予見可能な範囲では、FRBの金融政策がリスクの筆頭格であることは疑いの余地が少ないだろう。過去の拙速な利上げを受け、景気後退のサインとなる長短金利の逆転が近づいている。また、既に過去のバブル期の水準を上回っている米国企業の債務レバレッジを抑制する目的で保有資産の圧縮が進められているが、この政策は当面継続する。社債コストの上昇を受けたクレジットサイクルの「逆回転」が発生するリスクが現実味を帯びてきた。

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