2017年9月日銀短観

製造業の業況感が予想以上に改善、人手不足感は依然強い

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2017年10月02日

  • 金融調査部 主任研究員 長内 智
  • 小林 俊介

サマリー

◆9月日銀短観では、製造業と非製造業で業況感がまちまちの結果となったものの、業況判断DIの水準などを総合的に勘案すると、日本企業のセンチメントは良好な状況が続いていると評価できる。特に、円安や輸出の改善を背景に製造業の業況感が一段と改善した点が注目される。なお、調査時期(8月29日~9月29日)を踏まえると、9月日銀短観の結果において、今回の衆議院解散の影響はほとんどないとみられる。


◆大企業製造業の「業況判断DI(最近)」は+22%ptと前回(+17%pt)から改善し、市場コンセンサス(+18%pt)を大きく上回った。海外経済の回復が続く中で輸出が改善し、ユーロを中心に為替レートが円安で推移していることなどがプラスに作用し、4四半期連続の改善となった。大企業非製造業の「業況判断DI(最近)」は+23%ptと前回調査(+23%pt)から横ばいとなり、市場コンセンサス(+23%pt)通りとなった。


◆全規模全産業の2017年度の「設備投資計画(含む土地、除くソフトウェア)」は、前年度比+4.6%と増加する計画となり、市場コンセンサス(同+4.3%)を上回った。大企業を業種別に見ると、製造業の2017年度設備投資計画が同+14.1%、非製造業が同+4.0%となり、概ね過去の修正パターン並みだと評価できる。


◆全規模の雇用人員判断DI(最近)は、製造業と非製造業のいずれも低下(需給の引き締まり)し、企業の人手不足感が一層強まった。先行きについても、中小企業を中心に両業種が低下(需給の引き締まり)しており、労働需給は一層タイト化する見通しである。現在、一部の業種は雇用を確保することが困難な状況に直面しているとみられる。こうした業種では、正社員化や賃金引き上げなどの処遇改善を通じた人員確保のほか、省人化投資を通じた労働生産性向上などの対応が引き続き重要となろう。

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