サマリー
◆9月日銀短観では、製造業と非製造業で業況感がまちまちの結果となったものの、業況判断DIの水準などを総合的に勘案すると、日本企業のセンチメントは良好な状況が続いていると評価できる。特に、円安や輸出の改善を背景に製造業の業況感が一段と改善した点が注目される。なお、調査時期(8月29日~9月29日)を踏まえると、9月日銀短観の結果において、今回の衆議院解散の影響はほとんどないとみられる。
◆大企業製造業の「業況判断DI(最近)」は+22%ptと前回(+17%pt)から改善し、市場コンセンサス(+18%pt)を大きく上回った。海外経済の回復が続く中で輸出が改善し、ユーロを中心に為替レートが円安で推移していることなどがプラスに作用し、4四半期連続の改善となった。大企業非製造業の「業況判断DI(最近)」は+23%ptと前回調査(+23%pt)から横ばいとなり、市場コンセンサス(+23%pt)通りとなった。
◆全規模全産業の2017年度の「設備投資計画(含む土地、除くソフトウェア)」は、前年度比+4.6%と増加する計画となり、市場コンセンサス(同+4.3%)を上回った。大企業を業種別に見ると、製造業の2017年度設備投資計画が同+14.1%、非製造業が同+4.0%となり、概ね過去の修正パターン並みだと評価できる。
◆全規模の雇用人員判断DI(最近)は、製造業と非製造業のいずれも低下(需給の引き締まり)し、企業の人手不足感が一層強まった。先行きについても、中小企業を中心に両業種が低下(需給の引き締まり)しており、労働需給は一層タイト化する見通しである。現在、一部の業種は雇用を確保することが困難な状況に直面しているとみられる。こうした業種では、正社員化や賃金引き上げなどの処遇改善を通じた人員確保のほか、省人化投資を通じた労働生産性向上などの対応が引き続き重要となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年11月雇用統計
失業者数が減少し、雇用環境の改善が進む
2025年12月26日
-
2025年11月鉱工業生産
自動車の減産などが押し下げ要因/当面の間は軟調な推移を見込む
2025年12月26日
-
トランプ関税の影響緩和に作用した企業対応
自動車は関税負担吸収で他企業への波及回避/機械は価格転嫁
2025年12月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

