サマリー
◆2012年末以降の円安局面において期待された輸出数量の増加が見られず、為替と輸出数量の関係に変化が生じている可能性が指摘されている。一方で、円安に伴って輸出価格は上昇し、輸出金額が増加した。
◆輸出数量の変動要因としては世界需要や輸出企業の価格設定行動などが挙げられる。世界需要の伸びは鈍化しているものの増加傾向が続いており、輸出数量が伸びない理由を世界需要の成長鈍化に求めることは難しい。
◆そこで輸出企業の価格設定行動について確認すると、為替が円安になれば、契約通貨ベースの輸出物価の低下が期待されるところだが、実際には下がっていない。そのため、輸出数量が増えていないにもかかわらず、輸出金額は増加したと考えられる。輸出物価を財別に確認すると、輸送用機器など日本の主要な輸出財の一部において契約通貨ベースの輸出物価の低下が見られない。
◆契約通貨ベースの輸出物価が低下していない背景の一つに財の高付加価値化が挙げられよう。財が高付加価値化すれば、価格競争に巻き込まれるリスクが低減することが考えられ、円安時に価格下落圧力が緩和される可能性が指摘できる。
◆高付加価値化を変数に取り入れた輸出関数の推計を行うと、高付加価値化の進展が輸出数量を安定化させることが示された。また、ローリング回帰分析により、時間の経過とともに輸出数量の為替感応度は低下していることが示唆された。
◆日本の輸出構造は、数量によって稼ぐ体制から、財一単位当たりの付加価値を高めて稼ぐ体制に変化している可能性がある。そのため、円安にもかかわらず輸出数量が伸びないことを過度に悲観する必要はない。ただし、現在の高付加価値財もいずれコモディティ化する可能性があり、生産コストの高い日本が付加価値の低い財で国際競争を勝ち抜くことは難しい。そこで、国際経済の中でのプレゼンスを維持するためには、これまでの財の高付加価値化の動きをさらに加速させる必要があるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
CPIの2025年基準への改定による影響
コアCPIの前年比上昇率は0.0~▲0.3%pt程度の下方改定か
2026年07月16日
-
2026年5月機械受注
船電除く民需は前月の反動などで大幅に減少
2026年07月15日
-
骨太方針のポイント② ~「責任ある積極財政」の試金石は2030年代に
「財政ボーナス期」後を見据え「成長ありき」でない財政運営が必要
2026年07月15日
最新のレポート・コラム
-
データサイエンスを踏まえた年金数理理論の人的資本分析への発展可能性
新たな退職率算定方法による退職要因分析への応用
2026年07月17日
-
AI時代に自社のサイバー対策は正解なのか?
~Claude Mythos騒動を受けた各企業の対応を確認する~
2026年07月17日
-
CPIの2025年基準への改定による影響
コアCPIの前年比上昇率は0.0~▲0.3%pt程度の下方改定か
2026年07月16日
-
中国:26年2Qは4.3%成長、内需が急減速
4月~6月は政府成長率目標の下限を下回る
2026年07月16日
-
AI時代の競争力を生むのは誰か? ~シリコンバレーとシアトルが示す「人材エコシステム」の力~
2026年07月17日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

