サマリー
◆中国経済の減速が止まらない。中国の「景気循環信号指数」を見ると、2014年に入ってから低下傾向を強め、2015年6月には景気の「低迷」を示すゾーンに突入した。中国の景気減速の背景には、企業活動の弱さがある。先行きの中国経済を占ううえで重要なカギとなるのは、中国の景気下支え策が今後どの程度発動されるかという点である。
◆中国人観光客の“爆買い”と対中輸出が日本経済に与える影響度を比べると、後者が圧倒的に大きい。対中国輸出が半年間低迷(1割減少)した場合、日本の名目GDPは5,220億円減少する。他方、中国人観光客数が1年間で3割減少すると、名目GDPは663億円減少することになるが、対中輸出が低迷した場合に比べて影響はかなり小さい。
◆中国の株価や不動産価格と個人消費に有意な相関は見られるのだろうか?通常、中国では、住宅価格が上昇(下落)すれば小売売上高が増加(減少)する傾向がみてとれる。これと対照的に、株価と小売売上高に関しては、明確な相関関係が認められない。つまり、中国において個人消費を規定するのは株価よりも、むしろ住宅価格である可能性が高いとみられる。
◆中国は2014年後半以降、住宅需要の喚起策を立て続けに実行した。この結果、70都市新築住宅価格指数(前年比)の先行指標に続き、中国の住宅価格指数が上昇傾向へと転じている。
◆中国の財政出動によって、固定資本形成が増加すると「一般機械」、「鉄鋼・非鉄・金属」、「化学」の生産が増加する傾向が強い。また、日本の多くの業種では、中国の消費刺激策よりも公共投資拡大の影響の方が大きいと考えられる。加えて、以前に比べて日本の「最終財」輸出の中国依存度が高まっており、中国の民間消費の影響が強くなっている可能性がある点に留意したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
2025年8月消費統計
サービス消費が強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2025年10月07日
-
財政悪化が日本経済にもたらす影響とリスクの定量評価
成長力強化と財政健全化で将来の財政危機発生リスクの抑制を
2025年10月07日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日