サマリー
◆2013年3月に日銀が新体制に移行してから、期待インフレ率を巡る議論が高まっている。足下では、消費者物価指数の上昇が続いていること、財務省が物価連動国債の発行を再開することなどから、インフレ率の予測に対する注目度が増している。
◆期待インフレ率とは、物価上昇率の予測値である。大別すれば、期待インフレ率には3種類の形態が考えられる。1つ目に、市場の期待インフレ率、2つ目に、企業の期待インフレ率、3つ目に、家計の期待インフレ率である。
◆家計の期待インフレ率の上昇は、個人消費や住宅投資を押し上げる効果がある。また、企業の期待インフレ率の上昇は、設備投資の増加につながる。また、市場の期待インフレ率は、為替レートや株価など、資産価格との連動性が高い。
◆期待インフレ率の上昇がフィリップスカーブの上方シフトに繋がれば、デフレ脱却に向けた動きも前進するだろう。ただし、期待インフレ率を考慮したフィリップスカーブの推計結果から、日銀の掲げるインフレ率2%の目標達成には、前年比+4.2%と高い期待インフレ率が必要であることがわかる。
◆フィリップス曲線の上方シフトには賃金の上昇が、賃金上昇には企業の期待インフレ率上昇が不可欠である。ただし、賃上げの主体である企業は、期待インフレ率を低く見積もる傾向にある。期待インフレ率の上昇がフィリップス曲線の上方シフトにつながるためのハードルは現時点では非常に高い。
◆足下では、輸入物価の上昇を製品価格に転嫁する動きがみられ始めている。この動きは、企業の期待インフレ率上昇に向けた第一歩であると考えてよいだろう。今後は、賃金上昇を伴う形で、企業が出荷価格を引き上げることができるか否かが、デフレ脱却の焦点である。そのためにも、強力な金融緩和と成長戦略の推進を、両輪で進めていくことが重要になると考えている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2026年1月機械受注
製造業の反動減などにより、船電除く民需は2カ月ぶりに減少
2026年03月19日
-
2026年2月貿易統計
春節の影響で輸出数量は減少、今後は中東リスクが懸念材料に
2026年03月18日
-
2026年3月日銀短観予想
製造業の業況は改善見込みも、中東情勢の緊迫化で先行きは悪化へ
2026年03月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
-
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
-
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日

