サマリー
◆【概況】貿易収支の赤字幅が一段と拡大:2012年5月の貿易統計は、これまで貿易赤字の主因であった輸入価格の伸びが鈍化した点が注目される一方で、代替燃料の輸入量が大きく増加して、貿易赤字が拡大するという先行き不透明感を強める内容であった。5月の輸出金額は前年比+10.0%と市場コンセンサスを小幅に上回り、プラス幅も前月より拡大した。ただし、営業日数が前年より2日多かったことや東日本大震災によって前年に落ち込んだ反動増の影響が大きく、今回の輸出の結果は幾分割り引いて評価する必要があろう。
◆【地域・品目別動向(名目)】対EUで初の貿易赤字:主要品目別にみると、輸出が増加した業種では、昨年の落ち込みからの反動増が続く「輸送用機器」が前年比+50.6%と4ヶ月連続で増加し、全体を押し上げた。他方、「化学製品」は、アジア地域で景気減速感が強まっていることやEU向けの低迷を受けて、前年比▲2.4%と9ヶ月連続の減少となった。主要国・地域別の輸出金額は、米国向けが前年比+38.2%(4月、同+42.9%)、EU向けが同▲0.9%(4月、同▲2.0%)、アジア向けが同+4.5%(4月、同▲2.6%)となった。
◆【今後の見通し】欧州債務問題が国際貿易へ波及:輸出は、総じてみれば横ばい圏で推移すると考えている。中国など主要新興国の欧州向け輸出の減速感が強まっていることに加えて、足下では米国の欧州向け輸出にも陰りが出始めるなど、欧州債務問題が国際貿易の重石になり始めている点には注意が必要であろう。ただし、当社では、欧州債務問題が一段と深刻化しなければ、輸出は腰折れせずに徐々に持ち直していくことを見込んでいる。輸入の増勢は夏場を境にして鈍化局面に転じると考えている。輸出が横ばい圏で推移し、輸入水準も高い状況が続く結果、貿易収支の赤字基調はしばらく継続すると予想する。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4-6月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率+2.2%に高まるも民間在庫などが主因
2025年09月08日
-
一億自己啓発社会の死角
データが示す、転職志向・子育て・ジェンダーにおける格差
2025年09月05日
-
2025年7月消費統計
需要側統計は強いが供給側は弱く、総じて見れば前月から概ね横ばい
2025年09月05日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日