絶滅のおそれのある野生生物種の学名、分布域、減少要因などの現状をまとめたものを「レッドリスト」という。レッドリストは科学的な分析結果を記載した基礎的な資料で法的な効力はないが、社会への警鐘として広く一般市民に情報を提供するとともに、法律や政策の決定者に対して野生生物保護の科学的根拠を与える資料などとして多方面で利用されている。
対象とする地域や種によって多くのレッドリストが存在するが、最も包括的で権威あるものとされているのは、国際自然保護連合(IUCN)(※1)によって作成されるレッドリストである(※2)。IUCNレッドリストは1986年に初めて作成され、2006年以降は毎年更新されている。野生生物種を、既に絶滅した「絶滅種」、飼育・栽培下でのみ生存している「野生絶滅種」、絶滅のおそれが極めて高い「絶滅危惧種」、絶滅のおそれが高い「準絶滅危惧種」など8種類のカテゴリーに分けている。危険度の評価は、個体数の増減や生息地、生育地の拡大/減少などの基準によって行われる。例えば、個体数については、10年間か三世代のどちらか長い方の個体数の減少率が90 %超なら絶滅危惧1A類、70%超なら1B類に分類される。最新のIUCNレッドリスト(2013年7月公表)には70,294種が登録され、うち20,934種が絶滅危惧種に分類されている。IUCNは今回のレッドリストについて、経済的な価値が高いスギの仲間の34%が絶滅危惧種であることが分かったほか、淡水・海洋生態系が危機的状況にあることに注目すべきであると解説している。
日本の野生生物のレッドリストは環境省、水産庁、日本哺乳類学会、各都道府県などによって作成されている。環境省版レッドリストは1991年から作成が始まり、おおむね5年ごとの見直しを経て、2012年に第4次レッドリストが公表された(※3)。種の分類や危険度の評価基準はおおむねIUCNに準じている。哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、その他無脊椎動物(クモ形類、甲殻類等)、植物I(維管束植物)、植物II(維管束植物以外:蘚苔類、藻類、地衣類、菌類)の10分類群に属する種を評価し、5,643種が掲載され、59の個体群が絶滅のおそれのある地域個体群として記載された。注目される種としては、ニホンカワウソが絶滅と判断されたこと、九州地方のツキノワグマが絶滅したことで、絶滅の恐れのある地域個体群から削除されたこと、ゲンゴロウが準絶滅危惧から絶滅危惧Ⅱ類にランクを上げたこと、ハマグリが新規に絶滅危惧Ⅱ類に選定されたことなどがあげられる。なお、マグロ類やクジラ類などを含む野生水生生物の多くは環境省の管轄でないため、評価対象には入っていない。
日本の野生水生生物に関しては、水産庁によって「日本の希少な野生水生生物に関するデータブック」(※4)が1998年に一度だけ作成されている。軟体動物、海産魚類、淡水魚類、両生・爬虫類、水生哺乳類、水生植物、剣尾・甲殻類、水鳥、その他の210種(亜種も含めると432種)について、分布、生活史、生態、生息環境、資源状況、漁業との関係、現状評価などが記載されている。半数以上の225種の生存基盤が脅かされており、マリモやジュゴンなど66種が絶滅が危惧される状況にあるとしている。ただし、種の分類や危険度の評価基準はIUCNや環境省のものと必ずしも一致はしていない。
(※1)スイスに本部を置く非政府機関で、設立は1948年。日本からは外務省や環境省、日本自然保護協会、経団連自然保護協議会などの官民団体が多数加盟している。(http://www.iucn.org/)
(※2)IUCN「レッドリスト2013.1」ウェブサイト
(※3)環境省プレスリリース(http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=15619 およびhttp://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16264)
(※4)自然環境研究センターウェブサイト
(2013年9月6日掲載)
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