2012年07月31日
2011年10月6日に環境省Webサイトにおいて公表された、我が国における金融機関等によるESG(E:環境、S:社会、G:ガバナンス)を考慮した金融行動のイニシアティブ。2010年6月、環境省の中央環境審議会に設置された「環境と金融に関する専門委員会」がとりまとめた報告書において、「日本版環境金融行動原則」の策定が提言されたことを受け、その趣旨に賛同した金融機関等25社が自主的に起草委員会を組織し、約1年の議論を経て策定した。
21世紀金融行動原則は、前文で「持続可能な社会の形成のために必要な責任と役割を果たしたいと考える金融機関の行動指針として策定された」として、7つの原則を示している。また、金融業界全体から幅広い参加(署名)を促すため、「運用・証券・投資銀行」、「保険」、「預金・貸出・リース」の業態ごとのガイドラインを設け、業態ごとに持続可能な社会の形成に寄与するための参照すべき諸基準、取り組み事例の主な切り口などを示していることが特徴となっている。
世界的には、機関投資家などのESG投資の原則を定めた先例として、責任投資原則(PRI)がある。PRIは世界の投資家を対象とした投資行動に関する指針となっている。これに対し、21世紀金融行動原則は、環境省が事務局となって、日本の金融機関を対象に投資行動だけでなく預金、保険、リースなども含めたすべての金融行動に関する指針として策定された点に特徴がある。21世紀金融行動原則への署名は、2011年11月15日から開始され、2012年3月13日の第1回定時総会時点では、署名金融機関は174社となり、銀行、信用金庫、保険、証券などさまざまな金融機関が署名している。
- 自らが果たすべき責任と役割を認識し、予防的アプローチの視点も踏まえ、それぞれの事業を通じ持続可能な社会の形成に向けた最善の取組みを推進する。
- 環境産業に代表される「持続可能な社会の形成に寄与する産業」の発展と競争力の向上に資する金融商品・サービスの開発・提供を通じ、持続可能なグローバル社会の形成に貢献する。
- 地域の振興と持続可能性の向上の視点に立ち、中小企業などの環境配慮や市民の環境意識の向上、災害への備えやコミュニティ活動をサポートする。
- 持続可能な社会の形成には、多様なステークホルダーが連携することが重要と認識し、かかる取組みに自ら参画するだけでなく主体的な役割を担うよう努める。
- 環境関連法規の遵守にとどまらず、省資源・省エネルギー等の環境負荷の軽減に積極的に取り組み、サプライヤーにも働き掛けるように努める。
- 社会の持続可能性を高める活動が経営的な課題であると認識するとともに、取組みの情報開示に努める。
- 上記の取組みを日常業務において積極的に実践するために、環境や社会の問題に対する自社の役職員の意識向上を図る。
(2012年7月31日掲載)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日