純粋持株会社は最強の組織か?

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2008年12月10日

  • 間所 健司

先日、新日本石油と新日鉱ホールディングスが共同株式移転により「統合持株会社」を設立するとの発表をしました。注目すべきは、持株会社のもとで、全事業を統合・再編・整理するという点です。同業の2社が単純に統合したとしても、直接的なメリットはそれほど大きくありません。この統合は、全事業にわたる全面的な統合で、経営資源の再配分によりグループ価値を最大化していくための持株会社体制です。今後の動きに注目していきたいと思います。


その持株会社という組織形態ですが、グループ・企業内組織としては、事業部制、カンパニー制、(事業持株会社、)純粋持株会社などがあります。明確な経営戦略と強い求心力が働くのであれば、多角化したグループにおいては、純粋持株会社は最適な組織であるといえます。


しかし最適=最強ではありません。我が国を代表する大手自動車メーカーも電機メーカーもいずれも持株会社形態を採用していません。


持株会社の主なメリットとして次のような点が挙げられます。

  • グループ全体として最適な戦略立案・意思決定・投資が可能になる。
  • 持株会社、各事業子会社とも役割が明確化し、事業責任が徹底される。
  • グループ企業に権限が移譲されることで、意思決定のスピード化が図れる。
  • 事業の買収や売却、再編などM&Aが容易になる。
  • 各事業子会社の業種や業務の特性に応じた人事制度の運用ができる。

とはいえ、いずれも、持株会社でなければ得られないメリットかというとそうではありません。事業部制でも、カンパニー制でも規定と運用で十分メリットを享受できると思います。筆者はM&Aの容易さが最大のメリットと考えています。実際、継続してM&Aを行っている会社に、持株会社体制をとっているところが多く、将来的なM&Aを考慮して持株会社に移行した会社も多くあります。


企業グループの長期にわたる持続的な成長を期するうえでは、グループ全体の事業構造の転換(チェンジ)が欠かせません。持株会社は最強の組織形態ではありませんが、成長のためにM&Aを活用していくとすれば、持株会社は効率的な組織といえます。

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