2011年12月06日
上海など中国の大都市に在住している方であれば、「月光族」という言葉をご存知であろう。毎月の給与を、貯蓄に回すことなく、次の給料日までの1か月の間に全て使い果たしてしまう人々のことを指す。富裕になった中国人の旺盛な消費活動を表現する言葉でもあり、将来への憂慮など微塵もなく刹那の享楽にふける現代中国人を揶揄した言葉でもある。2004年頃から使い始められた言葉らしい。弊社ホームページのアジアンインサイト『上海で見た豪遊する人々【2011/5/10付】』を一読すれば、かような中国人の実態を臨場感を持って窺い知ることができよう。
それとは対照的に、知恵を絞って倹約に励む中国人も多い。例えば、団体購入サイト(中国語で「団購網」)は、たいへんな人気だ。複数の人間が集まって、同一の商品を同時に購入すれば、定価より廉価で商品を手に入れることができる。筆者の上海の友人は、最近、家族と友人3名で団購網を利用して映画のチケットを購入したが、定価120元が35元にまでディスカウントされたそうだ。
もうひとつ別の上海の友人から聞いた話を紹介しよう。その友人が実際に利用しているのだが、上海には「通勤シェアリング」というものがあるそうだ。通勤時、自宅から最寄りの地下鉄駅まで徒歩で行くことができれば問題はないが、駅まで遠い場合、バスを使う必要がある。バス通勤は当然苦痛を伴う。タクシーに乗っていけば快適だが、毎日タクシー代を出せるほどの懐の余裕はない。
そこで、ネット上で“通勤仲間”を探す。つまり、同じ地区に住み、同じ時間帯に同じ駅まで向かう人間を見つけ出し、双方合意すれば晴れて通勤仲間となる。ネット上で出会った互いの素性も分からない彼らは、毎朝、決められた時刻に決められた場所で落ち合い、タクシーを拾って最寄りの駅まで向かい、駅で別れ、それぞれの勤務先へと向かう。もちろんタクシー代は割り勘。これでタクシー代を節約しつつ、快適な通勤を享受できるという。
中国は単一ではなく、そこに住む中国人の価値観も多様だ。月光族と呼ばれる中国人と団購網や通勤シェアリングを利用する中国人-両者は相矛盾するようだが、何れも現代中国人の真の姿である。日本のモノやサービスを中国市場で売ろうとする場合、やみくもに商品を投入するのではなく、様々なタイプの中国人がいることを認識し、それぞれのライフスタイルやその奥底にある心理を十分理解した上で、ビジネスプランを構築する必要があろう。
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