下水道施設に流入する水量のうち、雨水処理水量を除いた部分が汚水処理水量となり、汚水処理水量については、下水道の使用料が徴収されることが原則となる(有収水量)。しかし、実際には汚水処理水量と有収水量には大きな差が生じており、この部分の水量は「不明水」と呼ばれている。総務省が公表している「地方公営企業年鑑(※1)」によれば、2011年度の年間不明水量は、約25億5千万㎥となっており、年間総処理水量の17.1%を占めている。また、2011年度の不明水量は、前年度から約8千3百万㎥(3.4%)増加したとされている。
下水道事業全体でみると、2011年度の使用料単価(使用料収入÷年間有収水量)は135.98円/㎥となっているのに対し、汚水処理原価(汚水処理費÷年間有収水量)は156.13円/㎥となっている。金額ベースでみると、汚水処理費1兆6,999億円のうち、使用料によって回収された金額は1兆4,805億円とされており、約2千2百億円が回収できていない計算になる。下水道では、必ずしも排水口ごとにメーターを設置して使用量が計量されるわけではなく、水道使用量を汚水排水量とみなして課金する場合も多いとされている。地下水を利用した専用水道などの排水が、無届けで下水道に排出されるような場合には、使用料を徴収できない状態で汚水が処理される可能性もある。
一方、下水管には上水道のような水圧がかけられていないため、老朽化や破損などにより、雨水や地下水が下水管に混入しやすいとされており、このような混入水が不明水に占める部分も大きいと考えられている。雨水や地下水の混入が多い下水管では、雨天で下水管を流れる水量が多いときなどに、未処理の汚水が地下水や土壌に漏洩していることも考えられる。この他、雨水管の下水管への誤接続や雨天時のマンホールからの流入など、不明水の発生にはさまざまな可能性も指摘されているが、不明水の量が多くなると、雨天時のマンホール等からの溢水、下水道処理施設への負荷増大、下水道事業の経営悪化などの悪影響が懸念されるため、各事業体等で調査や改善への努力が進められている。
(2013年5月24日掲載)
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