森林環境税は、森林の持つ公益的機能の維持・増進を目的として、地方自治体が県民から徴収する地方税(※1)の一つである。使途となる森林・林業施策は、水源涵養や土砂災害防止などのための森林保全や里山の整備、木材利用促進などのハード事業から、森林環境学習、森林整備ボランティア支援などのソフト事業まで幅広い内容になっている(※2)


森林環境税は、平成15(2003)年度に高知県が“若齢林を中心とした間伐の促進による荒廃の予防と公益的機能を発揮できる森林の整備、森林環境教育など県民の主体的な森林保全の取組に対する支援など”のために初めて導入した(※3)。以来、平成24(2012)年度までに33県が同様の制度を導入している(図表1)。多くの県が5年間の時限措置としているが、ほとんどの県で継続運用されている。


図表1 森林環境税の導入例(平成21年度以降)

図表1 森林環境税の導入例(平成21年度以降)

(出所)林野庁「平成23年度 森林・林業白書」(平成24年4月27日公表)から大和総研作成



課税方式は県民税均等割に一定額を上乗せする超過課税方式がほとんどで、個人の場合は500~1,200円(年額)を上乗せし、法人の場合は標準税率の3~11%相当額を上乗せしている。1年間の概算税収額は上乗せ額や納税義務者数によって変わるが、高知県で約1.7億円(※4)、長野県で約6.5億円(※5)、神奈川県で約38.6億円(※6)などである。多くの県では森林環境税条例の制定に合わせて、当該税収を基金に積み立て、基金運営委員会が県民の意見を反映しながら必要額を森林・林業施策に繰り入れる仕組みで運用している(図表2)。複数県が行ったアンケートによると、森林環境税に対して県民が賛意を示す割合は高いものの、認知度は低い状況にある。このため、県が取り組んでいる森林整備事業等の周知により、県民の理解醸成を図ることが課題となっている(※7)


図表2 森林環境税の運用スキーム

図表2 森林環境税の運用スキーム

(出所)大和総研作成



(※1)地方自治体の課税自主権の強化を目的に2000年に創設された法定外目的税で、地方自治体が総務大臣と協議の上、条例で定めて導入される。

(※2)森林の水源涵養機能の回復・維持を目的とする場合は「水源税」、水源涵養機能だけでなく、土砂災害防止やレクリエーションなどの様々な公益的機能を目的とする場合は「森林環境税」と区別する場合もあるが、本稿ではこれらをまとめて森林環境税と呼ぶ。

(※3)高知県森林部森林政策課ウェブサイト

(※4)平成24年度の基金への積立額。高知県ウェブサイト

(※5)平成24年度の基金への積立額。長野県ウェブサイト

(※6)平成24年度の超過課税の活用額。神奈川県(「水源環境保全・再生のための個人県民税の超過課税」)は、個人の県民税均等割への上乗せ(300円)に加えて、所得割の税率に0.025%の税率が上乗せされる。法人課税はない。神奈川県ウェブサイト

(※7)岩手県「平成23年度以降の「いわての森林づくり県民税」素案に係るアンケート調査」(平成22(2010)年8~9月調査)、福島県「県民アンケート調査」(平成21(2009)年4~8月調査)、静岡県「「森林(もり)づくり県民税」に関する県民意識調査」(平成22(2010)年4~6月調査)、奈良県「森林環境税アンケート」(平成22(2010)年6月調査)、大分県「森林環境税に関するアンケート」(平成21(2009)年10~11月調査)、宮崎県「平成21年度森林環境税アンケート調査」(平成21(2009)年10~11月調査)


(2013年3月29日掲載)

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