IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)は人間の活動が気候変動に与える影響や緩和策等に関して、科学的、技術的、社会経済学的な見地から、関係する科学論文の評価を行っている国連の組織である。1980年代の半ば以降に気候変動に危機感を強めた各国の研究者や政策担当者が、国際会合で議論する中から1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された。
評価をとりまとめた結果は「評価報告書(Assessment Report)」として、これまでに1990年、1995年、2001年、2007年の計4回公表されている。評価報告書は「気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)」などの、地球温暖化対策に科学的根拠を与える重要な資料として各国政府や関係者の間で利用されている。なお、IPCCは2007年に米元副大統領アル・ゴア氏と共同で「人間の活動が引き起こしている気候変動と、それらの気候変動に緩和策が必要であることの基礎的な知見を広めた努力」に対してノーベル平和賞を受賞した(※1)。
評価報告書は第1作業部会報告書(自然科学的根拠)、第2作業部会報告書(影響・適応・脆弱性)、第3作業部会報告書(気候変動の緩和策)、統合報告書(総合的な見解)から構成されている(図表1)。また、それぞれの報告書には、政策決定者向け要約(SPM: Summary for Policymakers)と技術要約(TS: Technical Summary)も作成されている。
最新のものは2007年の評価報告書(AR4)で、次回の評価報告書(AR5)は2013年9月から順次公表される予定になっている。評価報告書の公式な日本語訳はないが(※2)、文部科学省、経済産業省、気象庁、環境省がほとんどの要約の日本語訳を公表している。評価報告書統合報告書の政策決定者向け要約(※3)では、全体の概要を簡略に読むことができる。

(出所)IPCCウェブサイトから大和総研作成
(※1)ノーベル財団
(※2)公式訳は6つの国連公用語(英語、アラビア語、中国語、フランス語、ロシア語、スペイン語)のみ作成される。
(※3)環境省ウェブサイト
(2012年10月1日掲載)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日