人に活躍機会の場を増やす組織再編

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2011年06月22日

  • 小杉 真
2011年も早や中間点を迎えようとしている。今年もこれまでに、20件を超える上場会社による持株会社体制への移行(方針決定等含む)が公表されている。複数企業による共同持株会社の設立といったM&Aのスキームとしての持株会社体制移行も見られるが、単独での株式移転や会社分割といった組織再編による持株会社体制の採用も多い。

単独での持株会社体制移行の目的として、グループ経営の強化、ガバナンスの強化といった点を挙げる企業は多い。ほとんどの企業は、持株会社体制移行を企業価値の向上のためとしている。これらは経営者が株主・投資家から求められているものである。グループ全体を見回して最善の戦略構築を持株会社が、与えられた経営資源を用いて個別事業の最適運営を事業子会社が担うという姿は、より役割が明確化された状態と言える。また、事業を切り出すことにより独立心を鼓舞し、事業子会社が当該事業に集中することで、その成長拡大を目指すという方針は、外部の視点のみならず、そこに働く労働者にとってもわかりやすい戦略といえる。

事業子会社に権限が委譲され、より強い目的と責任感を持って業務を遂行するようになると、その経営を担う人材にとっては、一企業内の部門責任者であるのと比較して、他に替えがたい経験にもつながる。実際に、次世代の人材育成を目的の一つとして、持株会社体制移行・事業部門の分割を実現する企業も見られる。ここで権限を委譲され、経営にあたる人にとっては、安定した株主(持株会社)のガバナンスの下で、その持てる能力を存分に発揮する絶好のチャンスを得ることとなり、将来のグループ経営を担う存在への飛躍も期待できよう。また、その個別事業に関連した仕事を望む人たちにとって、人材募集に対して応募しやすい環境になるとも考えられる。

企業がよい製品、サービスを提供し、それらが社会から評価され、結果としてその企業に利益が還元される。その仕組みを継続するためには、その会社で労働者が気持ちよく働ける環境は必要である。労働者に活躍の機会を与えることも、組織再編の目指すところである。

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