経営戦略の羅針盤 経営戦略の羅針盤 第25回 ロールモデルを探せ

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あっという間に北京オリンピックも終わった。日本人選手の活躍も連日のように報道され、メダルの獲得に一喜一憂した。特に連覇して金メダルを獲得した選手のアテネ後の4年の苦労話には誰もが感動し、自分自身への刺激となった人も多かったのではないだろうか。


小学生の場合、このようなオリンピックをはじめ、野球やサッカー選手の活躍を見て憧れたり、自身の将来の目標にしたりすることがある。社会人の場合、これにあたるのがロールモデルではないだろうか。


ロールモデルには、「行動のお手本、模範」という意味があり、将来あの人のようになりたいと思わせるような存在のことである。


私自身振り返ると、社会人3年目、エコノミストとして海外赴任した先で当時の上司に、「目標とする先輩を見つけろ。そして、本当に忙しい先輩に学べ。」と云われた。学生時代は運動部系だったので「目標とする先輩を見つけろ」という言葉は感覚的に理解できたが、「本当に忙しい先輩に学べ」の意図はすぐにはわからなかった。


忙しい先輩は、未熟な後輩の面倒など見てくれるはずもないと考えるのが一般的だろう。


だが、ロールモデルともなりうる忙しい先輩をよく観察していると、他の人と違うことがわかった。調査に当たっては必ず、原典となる政府や中央銀行の統計集にあたり、国際比較が必要な場合にはIMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)の統計集を使い、さらに年次データをレポート中で使う時には、レポートで必要とされる期間より長めの期間のデータ収集をし、時系列の変化をみていた。基本に忠実であり、仕事に無駄がないのである。仕事への姿勢、処理能力、段取り、など学ぶべきことが多々あった。さらに、忙しい先輩には、その仕事の質や能力の高さから、仕事も集中していた。


人材の流動化が激しい昨今では、身近で全てを兼ね備えた完璧なロールモデルを探すのは難しいかもしれない。でも、ふと周りを見渡せば、段取りに長けている人、交渉能力の高い人、事務処理や緻密さに長けている人、組織を超えた調整能力のある人、などそれぞれの強みを持っている人は結構いる。


資格取得や処世術のノウハウ本に頼る前に、周りに存在するロールモデルを探して、自身の不足する部分を補ってスキルアップを図ってはどうだろうか。

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