経営戦略の羅針盤 第19回 会議考

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日本の社会は、会議が多いとよく言われる。実際、官庁や企業、学校などに限らず、マンションの理事会、サークル、PTA、町内会などさまざまな場面で会議が行われている。一般的に会議に対するイメージは、あまり良くない。よく聞かれるイメージとしては

  • 時間が長くて堅苦しい。
  • 形式的なものとなっていて、実質的な議論がない。
  • 資料やホワイトボードも使われず、議論の焦点が見えなくなることがある。
  • 何のために集められたかわからない。
  • 報告や連絡だけならメールでも済むのではと感じることがある。
  • 何も決まらない、もしくは新しいアイディアが出てこないことがある。
  • 話が長くてうんざりする人か、人の意見に否定的なコメントばかりする人がいる。

などがあり、列挙すればきりがない。会議を変えることはできるのだろうか。


「会議」の傾向

私自身、かつて3年間ほど小学校のPTA役員を経験したことがあり、上記に挙げられたイメージを実感した。PTAのような会議では、「前例主義」、「意思決定より活動報告が中心」、「事務局機能が必ずしも強くない」、などの傾向がある。特に、「前例主義」が強く、前年度の内容を踏襲することを是とし、大きな変化を嫌う傾向にあった。その背景には、前年度と違うことを実施しようとした場合、誰がそれを実行し、責任を負うのかわからないし、その負担を負いたくないという意思が会議の参加者に働くからであった。


PTAという組織は、それぞれの参加者に仕事なり家庭があるわけでボランティア的な性格が強く、活動に大きくコミットするのは難しい(特に、時間的に)という側面がある。そのため、大きな変化は受容し難いのである。


「小さな変化」

しかし、前例踏襲で議論の殆どなされない会議では、面白くないのは誰しも同じである。
そこで、小さな変化を試みることとした。
そのポイントは、「紙にする」「ビジュアル化する」「全員参加型にする」の3点だった。
まず、「紙にする」である。区の教育委員会などが主催するセミナーに出席することが年に数回あるが、セミナー出席者は翌月の役員会でその概要を口頭で報告するだけだった。そのため、出席したセミナーに今後のPTA活動や現状の改善に資するような内容があっても聞き流されてしまうことが多かった。そこで、私はセミナーに出席した際、簡単な報告メモを残し、それを配布して報告した。口頭の報告で済まされていた時より、他校の活動や参考事例の共有が進むこととなった。


次に「ビジュアル化する」では、活字が中心であまり読まれなかったPTA会報をビジュアル化することを提案した。具体的には、PTAの各種委員会の役割や活動の内容を図表や絵を用いて月替わりで紹介することである。一般家庭の両親に、PTA活動に対する理解を得るためである。会報が見易くなったとの声が聞かれるようになった。


さらに「全員参加型にする」では、前述のPTA会報の新たな呼称を決めることを提案した。役員会の場で、参加している役員全員から呼称のアイディアを一つずつ挙げてもらい、黒板に書き留めていった。いくつか候補をグルーピングし、決選投票で「PTAあらかると」と命名された。その後、この会報には、クイズコーナーやPTA活動のサポート機関である「父親の会」のメンバーを月替わりで紹介するコーナーなどが、皆のアイディアとして展開されるようになった。白黒ではあるが、ビジュアル化は進み、挿絵やデジカメ画像が豊富で読み易い会報へと発展し、現在も続いている。


官庁や会社で行われている会議も同様ではないだろうか。大きな変化はどのような組織でも受容し難いだろう。しかし、会議の運営方法やテーマ設定、資料の配布などに少し工夫を加えていくだけで、会議を変えることは可能なのである。

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