経営戦略の羅針盤 第18回 ビジネス文書考

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前回は、コミュニケーションについて触れた。今回は、メール、報告書、提案書などビジネスパーソンにとって、苦労する材料となっているビジネス文書とメールについて紹介したい。


ビジネス文書には社外向けと社内向けがあり、それぞれに気を遣うことも多い。丁寧に文体を使い分ける時間がないというのが実情ではないだろうか。そこで、私は社外向けを想定して社内文書を作成するように努めている。社外文書をベースとすると、やや表現が堅くなるデメリットがあるが、どちらにも転用が効き時間を節約できるメリットがある。


この時、ビジネス文書としての基本は「エグゼクティブ・サマリー」に集約されている点を参考としている。古くはイギリスのチャーチル元首相や、レーガン米元大統領が用いていたもので、どんな案件でもA4判またはB5判一枚に要約するというものである。トヨタやホンダも、十数年来、同様の「ワン・ベスト運動」(あらゆる文書を一枚にまとめる)を展開している。


私が我流にアレンジして実践している「エグゼクティブ・サマリー」のポイントは、5つある。

  • 要点(3つから5つ)は、文書の冒頭に
  • 文書の基本は、5W1H
  • 結論を先に持ってくる
  • 長文よりシンプルな記号(○、□、△、※)で、文章を視覚化する
  • クイックレスポンス(会議メモ、面談録は30分以内にまとめる)

5点目に挙げたクイックレスポンスをマスターするのは難しいかもしれないが、慣れれば会議参加での集中力アップや要約力の強化など副次効果も狙える。


Eメールにおけるブラッシュアップ法

誰もが活用しているEメールを題材に、エグゼクティブ・サマリーに通じるビジネスメールのブラッシュアップ法を紹介したい。

(1)件名タイトルで相手をつかめ

忙しい人ほど、メールに目を通す時間は少ない。そんな相手にタイトルで内容を把握してもらうべく、[要返信][ご参考][アポ][日程のご連絡][招集通知]などの小見出しをつけるだけでなく、日時(可能なら場所も)を入れておくことをお薦めしたい。

(2)本文は簡潔に

メールを開いて長い文章で閉口した経験のある人は多いはず。基本は5W1H。メール本文全体を、一瞬で概観できるように一行当たり全角で30?35文字、一パラグラフを4?5行にまとめる。そして、可能ならば、全体を20行程度にまとめる。一画面にメールの内容が収まっていると読み手も楽であり、スクロールによるストレスを感じなくてすむ。署名も可能な限り2?3行以内に収めることがベストである。

(3)CC、BCCを有効活用

通常、社内の上司や同僚にCCやBCCを使うことが一般的だが、さらに効果的に使うには、自分の部下や仕事を手伝ってくれている他部門のスタッフにも、BCCなどで送ることで、仕事の進捗状況が伝わるし、仕事への参画意識を高めるなどの効果が期待できる。但し、個人情報保護や情報漏洩に留意すべきことは言うまでもなかろう。

(4)添付ファイルは必要最低限に

添付ファイルは、受け手側のアプリケーションのバージョン違いや、アプリケーションそのものを持っていないために受け手側が開けないこともある。そこで、可能ならば添付ファイルはやめるか、PDF化したものにするか、画像などの場合はアクセスの限定されたWEBサイトのURLを知らせる(対外秘ならば、パスワードや時間限定を付ける)などの工夫があろう。

(5)絵文字は控える

ビジネスメールで絵文字は少なくなったが、やはり親しき仲にも礼儀ありであるし、たまたま他にメールを転送する場合など邪魔になるケースもありうる。絵文字は控えた方が無難である。


ビジネス文書といえども、その人となりをあらわす。日頃から形式や表現方法に留意しておくことで、クールでスマートなビジネス文書やメールの作成を身につけることが可能である。まずは、メールからでもスタイルを見直してはどうだろうか。

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