経営戦略の羅針盤 第17回 コミュニケーション考

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若い世代が集まったときに仕事以外の話題としてよく使われるのが、出身地・趣味・星座・血液型などである。それは、相手との距離感を近づけるためであったり、相手を既知のカテゴリー分類で把握することで心理的な圧迫感が排除されるからである。


昨今の企業内組織における病弊としてみられるのが、「理念ビジョンの形骸化」「セクショナリズムの横行」「人事評価に対する不信感」「マネジメントの機能不全」「顧客視点の欠落」などである。これらの背景にあるのは、社員とその上席者のコミュニケーション不足である。入社2?3年目の若手社員が、突然辞めてしまうという例も少なくない。


どのように若手とコミュニケーションすればよいのだろうか。


コーチングという手法

コミュニケーションの手法として、コーチングという言葉が最近聞かれる。もともとは「コーチ」という言葉が1500年台に「馬車」との意味で使われ、この言葉は「大切な人をその人が望むところまで送り届ける」という意味から派生したといわれている。その後、スポーツ分野で指導者がコーチと呼ばれ、マネジメント分野で「コーチ」という言葉が使われ始めたのは1950年代と云われている。


現在、使われている「コーチング」は、部下とインターラクティブにどう接していくかを体系化したもので、「コミュニケーション」の視点から人を4タイプに分類し、それぞれのタイプにあった形で接すると良いという手法である。(表参照)


表:「コーチング」における4つのタイプ分け

コントローラー
(人や物事を支配するタイプ)
<特徴>
  • 支配的、威圧的
  • 人の話を聞かない
  • 行動的、野心的、エネルギッシュ
<このタイプとの関わり方>
  • 頭ごなしにものを言うと、回路が閉ざされてしまう
  • 単刀直入に話しても大丈夫
プロモーター
(人や物事を促進していくタイプ)
<特徴>
  • 人と活気のあることをすることを好む
  • 変化や混乱に強く、順応性が高い
  • 計画性に乏しい
<このタイプとの関わり方>
  • 質問をしてアイデアを引き出してあげると、モチベーションがあがる
  • ネガティブなアプローチは避ける
アナライザー
(情報を収集、分析し、戦略を立てていくタイプ)
<特徴>
  • 物事を進める前にデータを集め、分析する
  • 粘り強く、最後までやり遂げる力がある
  • 変化や混乱に弱い
<このタイプとの関わり方>
  • 大量のデータを欲しがっていることを理解する
  • 感情表現・が苦手なので、内面に注意を向けることが必要
サポーター
(全体を支持していくタイプ)
<特徴>
  • 人との協調性を大事にする
  • あたたかく、穏やかな性格
  • 決断力が乏しい
<このタイプとの関わり方>
  • あまり自分を表現しないので、彼らが欲求していることを見つけてあげるようにする
  • 提案、欲求をちゃんとさせることも必要

(出典)コーチ21 「コーチング基礎知識」より大和総研作成


コーチングを例に挙げたが、別の人材育成会社の使うタイプ分けでは、「達成支配要求型」「論理探求欲求型」「審美創造欲求型」「貢献調停欲求型」の4タイプを提示している。しかし、いずれのタイプ分けを活用するにしても、アンケートなどの事前調査が必要になる。また、各人のタイプが判明したからといって、そのタイプへの接し方が万能とは限らない。


タイプ分けをする前に

このようなタイプ分けの利用を否定するつもりはないが、まず、重要なのは日頃の観察とコミュニケーションではないだろうか。


仕事の進め方、簡単な事務処理への対応、電話や人との話し方など仕事上の様子を観察することで性格はみてとれるし、趣味や家族の状況などを材料に差し障りのない範囲でコミュニケーションしているうちに、その人の「人となり」は判るものである。


メールが普及し意思疎通が難しくなってきているが、何気ない仕草や会話の中に、その人の気持ちや本音をみいだすことができる。それともう一つ大事なことは、仕事に限らず、褒めることである。人に感謝されたり、褒められたりして嬉しくない人はいない。


「あの資料わかりやすかったよ。」「この間のお薦めの店、良かったよ。」といった一言から、コミュニケーションをスタートさせてはどうだろうか。

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