経営戦略の羅針盤 第15回 新潟県中越沖地震に学ぶもの

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16日に発生した震度6の新潟県中越沖地震では、死者11名、重軽傷者1800名超を始め大きな被害となった。04年10月の中越地震、今年3月の能登半島地震と北陸中越地域はここ数年の地震経験があったこともあり、震災対応がこれまでに比べ迅速だったとの印象がある。公開情報や報道などを参考に今回の地震の被害状況とその対応振りから学ぶべき点についてみてみたい。


家屋の倒壊とともにライフライン復旧に苦しむ

新潟県は地震関連情報として、「被害状況」、「ライフライン(電気・上水道・電話・都市ガス)被害・復旧状況」、「新潟県災害対策本部の実施状況」、「住宅関連情報」、「義援金・救急物資・ボランティア情報」など多岐にわたる情報を発信している。特に、「被害状況」と「ライフライン被害状況」については、数時間毎に状況の変化を伝えている。


「被害状況」をみると、人的被害では重軽傷者が1812人、避難者数は75箇所の避難所で2877人、住家被害は、全壊が960棟、半壊が705棟。全壊は殆どが柏崎市(全壊908棟)となっている(23日(月)9時現在)。さらに「ライフライン被害状況」では、電気は18日に復旧したものの、上水道は柏崎市で復旧率が47.9%、刈羽村ではまだ復旧できていない。都市ガスはさらに厳しく、柏崎市地区で2.6%、刈羽村ではやはり復旧できておらず、ライフライン被害が甚大であったことがわかる。


今回の震災対応で学ぶべき点

今回の地震の特徴をみると、建物の倒壊により死亡したケースが殆どであり負傷者も家具の転倒や店舗の陳列物の落下によって被害を被っていること、ライフラインの寸断により地域によっては全世帯の緊急避難勧告がなされていること、などがある。


過去の経験を生かした点では、避難誘導・安否確認などの初動対応が円滑であったこと、県と柏崎市は個人からの支援物資はその仕分け作業に人手と時間がかかることから断ったこと、が挙げられる。また、今回課題としてうきぼりになったのは、全壊したのは古い木造住宅で耐震対策が遅れていたこと、支援物資が行き渡るのに時間がかかったこと、自衛隊の炊き出しなど温かいものの支給が始まったことで先にコンビニ等から支援のあった期限付きの食料(おにぎりやパン)が一部廃棄処分となってしまったこと、ライフラインの復旧に時間がかかっていること、などである。

新潟県中越沖地震の震災対応で学ぶべき点

参考となった点
  • 地震情報(特に被害状況・復旧状況など)の適切な発信
  • 避難誘導・安否確認の市区町村など自治体レベルの備え
  • 支援物資の手配(個人からの支援を予め断る、コンビニ・スーパーなどとの連携)
  • 簡易入浴サービスの提供  など
課題となった点
  • 既存住宅の耐震対策についての現状把握や支援策
  • ライフライン早期復旧のための対策
  • 支援物資の内容、配給方法及び高齢者・幼児への配慮
  • 医薬備品など緊急用備品の期限の確認  など

(出典)新潟県の平成19年新潟県中越沖地震関連情報および各種報道より大和総研作成


もし首都圏で地震が発生したら

今回地方都市である柏崎市の震災でこれだけの被害となった。もし首都直下型地震が発生したらどうなるのか。東京都の被害想定によると、「冬の夕方にマグニチュード7.3の地震が発生した場合」、死者およそ6千人、負傷者約16万人、帰宅困難者は447万人でると予測している。いざという時の家族との連絡方法、復旧までにかかるといわれる震災後3日目までの飲料や食料の確保、当面必要とされる現金の確保など準備できているであろうか。


震災対策に完璧はないが、市区町村など自治体における連携が重要であり、企業においても従業員の安否確認や事業継続のための備えだけでなく、地元との連携も視野に入れておく必要はあろう。


最後に、この場を借りて、今回の震災で亡くなられた方のご冥福をお祈りすると共に、被災された多くの方々にお見舞いを申し上げたい。

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