経営戦略の羅針盤 第14回 個人株主が意識を変え始めた2007年の株主総会

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先月末で、3月期決算企業の株主総会がほぼ終了した。今年の株主総会では、株主提案の増加、特に外資系投資ファンドを中心としたものが増えたことが目に付いた。


株主提案の変化、国内の株主中心から外資系投資ファンド中心へ

日本経済新聞社の報道によれば、「例年は原子力発電所に否定的な株主が電力会社に定款変更を求めるケースなどを中心に20社弱で推移。昨年は19社のうち6社が電力会社で、他は個人株主が中心だった。」(2007年6月15日、11面)というのがこれまでの株主提案の傾向であった。しかし、今年は外資系投資ファンドが、増配要求を中心に買収防衛策への反対、取締役選任の要求などを掲げ、株主提案の総数は例年の倍となる40社近くになったとみられている。


最終的には、株主提案はすべて否決され、企業側の買収防衛策導入案(約210社)は殆ど承認される結果となった。


個人株主増と外国人株式保有比率の増加の影響

しかし、ここで注意すべきなのは株主構成の変化である。6月15日公表の平成18年度株式分布状況調査(東証を含む全国5取引所の集計)によると、個人株主数は前年度比120万人増の3928万人となり、11年連続で過去最高を更新した。また、株式保有比率では、平成17年度同様外国人が上昇し、外国人の株式保有比率は28%に上る結果となった。


これらの影響が、結果的には否決されたものの株主提案の賛成票に現れているのである。外資系投資ファンドによる増配要求(株主提案)は否決されたものの、株主提案への賛成票が膨らんだ結果となっていた。また、買収防衛策に対する反対票の比率もバラツキはあるものの、外国人持株比率の高い企業ほど反対票が多い結果となった。また、賛成が読めないことから企業側の定款変更の議案を事前撤回した企業もあった。


取締役選任提案では、現経営陣への不信を背景にお目付け役(社外取締役の選任)を要求していた。株主提案のあった取締役選任については、総会での議決権行使にガイドラインを見直す動きも出てきている。企業年金連合会が、今年から3年連続で自己資本比率(ROE)が8%を下回った企業には原則として総会で取締役再任に反対をする方針を決めたのである。


どう株主と向き合い自らの事業戦略、成長戦略、資本政策を語れるのか

いずれをみても、経営者として株主側に対し、どのように事業戦略、成長戦略、資本政策を考えているかを自ら語れるかがポイントなのではなかろうか。そして今年も、不祥事の発覚した企業の総会では、経営陣が陳謝し、厳しく説明責任やけじめを求める声が多かった。ここで大事なのは、発生した不祥事の原因と経営者としての責任をわかりやすく説明し、その後の再発防止策を真摯に伝えることではないだろうか。


今年の総会集中日は、28日で約1400社(警察庁まとめ)と、ピークの平成9年、2350社に比べ大幅に減った。個人株主が出席しやすい週末に開催した企業も約40社という。


かつて「もの言わぬ株主」と考えられていた個人株主も、意識を変え始めている。企業経営者は、改めて株主を意識した経営を考える時がきているのではなかろうか。

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