2007年04月10日
新年度に入り桜の開花とともに新人を迎える季節になった。入社式では、社長がそれぞれのメッセージを訓示に込めている。多くの訓示にある共通のキーワードは「コミュニケーション」と「法令順守」であるという。前者は、コミュニケーションの手段がネットや携帯電話の普及によって多様化したために、アナログな対話不足に危機感を覚えたものであり、後者は、昨今の企業不祥事を反映したものである。
前者の例では、「フェース・ツー・フェースのコミュニケーションを」(商社)、「多様な意見やアイデアをぶつけ合い、イノベーションへ」(電機)、後者では、「社会の規範となる行動を」(電機)、「法令順守でしっかりした心構え」(繊維)、「うそをつくな、悪いことをするな」(商社)などがあった。(日経新聞、2007年4月3日3面より)
なぜ、ことさら法令順守が問われるのか
いずれも時代を反映したキーワードであるが、法令順守についてはふと考えることがある。社会人となる以前から、法律を破ってはいけないこと、組織に加わったらその組織の約束事やルールを守ることは当然とされてきたはずである。ではなぜ、企業に入ったからといって改めて法令順守やコンプライアンスをとやかく問われなければならないのだろうか。
企業の社会的責任やステークホルダーへの説明責任などが厳しく問われるようになってきたなど、理由を挙げればきりがない。しかし、もっと簡単に表現すれば、先輩社会人達が、ルールを破ったからである。その理由にはさまざまあろうが、約束事を守ることができなかったのは事実である。
今のやり方が全て正しいとは限らない
今、研修を受けている新人諸君、あなた達の目で、その会社の社内ルールや仕事のやり方を確認してみて欲しい。上場・非上場企業に関らず、事業活動を続けてきた企業であれば、何らかの規程やルールに基づいて運営されているはずである。しかし、それら全てが正しいとは限らないし、間違ってはいなくともよりよい方法があるかもしれない。先輩達に、疑問な点をぶつけてみてはどうだろうか。先輩達にとっても、自身の仕事に対する説明能力を問われる良い機会である。疑問を投げかけられるというのは、問題意識を持っている証拠でもある。
厚顔無恥な新人で許されるのも一年だけである。臆することは無い、かつて学生時代にクラブやサークル活動で1年生だった時を思い出して欲しい。先輩に聞きながら周りに迷惑をかけながらも、成長していったはずである。
新人諸君、組織変革の新風を巻き起こしてみてはどうだろうか。
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