2007年03月13日
「先日の出張のお礼状できた?」「今度の新製品発表の案内状できた?」と上司から聞かれ、「もう少しです。」と答えながら、かつて使ったワード文書を部内のサーバーからあわてて探すという経験をされた人は多いのではないでしょうか?
以前作成した書類があれば、このような作業は楽である。
内部統制と文書化
昨今、内部統制の構築が叫ばれ、会社法や金融商品取引法では内部統制の整備が求められている。内部統制を整備するにあたり、各企業では既存の社内規程の棚卸し作業に着手したり、社内手続の見直しなどが行われている。ここで必ず必要とされるステップが、「文書化」である。
業務上で「文書化」される文書には、原則やルールを書き記した規程やマニュアルと、その原則やルールに従って業務を遂行する上で承認を得るための申請書や業務の遂行結果をまとめた報告書など、大きく2種類の文書がある。いずれの文書も作成するまでには苦労を要するが完成してしまえば、あとは適切に運用していくことを心がけるだけである。
では、これら「文書化」のメリットにはどんな点があるのだろうか?
「文書化」のメリット
「文書化」のメリットで最たるものは、当該業務が標準化、可視化されることである。どんなに良い制度やルールでも、それを利用する者が知ることができなければ運用はおぼつかないし、顧客訪問やセミナーの聴講でどんなに貴重で価値在る情報を入手しても第三者に分るようになっていなければ価値は当人の者だけに留まり組織として有効活用されない。業務が「文書化」により標準化されることで、無用な思考や情報伝達が省略でき全体の効率が向上するだけでなく、業務の信頼性や安全性にも貢献する。
例えば、スタッフ部門における業務マニュアルを考えてみよう。メーカーの製造現場や外食の接客現場などではマニュアルが一般化しているが、総務部の定型業務や経理や財務での入出金処理や経費精算など、意外と属人的なノウハウと先輩から後輩へOJTで引き継がれてきた業務が多いのではなかろうか。しかし、それらをマニュアル化(業務マニュアルに)することで、無駄な作業はなかったか、上長への確認が抜けていなかったかなどを可視化できる。さらに、人事異動の際や新人・中途採用者への引継ぎマニュアルにも使える。これまでのリストラでスタッフが少なくなり、新人や中途採用者への指導に時間をあまり割けない場面では、まずは業務マニュアルを読んでもらいその部門の仕事を理解してもらうことに使えるだろう。それから、OJTへ移ればよいのである。
このように「文書化」には、さまざまなメリットがある。しかし、留意したいのは「慣れ」である。文書化されていることに満足し、注意を怠りミスにつながることもあるからだ。「文書化」のメリットを最大限に活かし、内部統制を整備していくことを期待したい。
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