経営戦略の羅針盤 第4回 リスクを洗い出せ

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2007年、主要企業トップが年頭所感で用いたキーワードには、「攻めの姿勢」、「イノベーション」、「実行力」など成長を謳うものがある一方で、「品質」、「内部統制・リスク管理」、「品格」、「安全」、「コンプライアンス」など原点回帰ともとれる表現が並び、昨年の品質問題や不祥事をみて足元をみつめ直そうという企業の姿勢が伺える。
企業経営にとってはこれまでの品質や安全の管理も含め、リスクを再認識することが重要になってきている証左といえるのではないか。


発生確率がゼロのリスク?

「現場にリスクの洗い出しをさせると、小松空港から発進した自衛隊機が墜落するリスク、北朝鮮からテポドンが飛来するリスクなどを挙げてくるケースが想定されますが、このようなリスクまで考慮すべきかどうか、大村さんはどうお考えですか?」
「発生確率がゼロに近いリスク要因は、検討から外しても良いかもしれませんね。」
これは、昨年(2006)7月4日に、石川県のある企業で私がリスク管理のプレゼンをした後の質疑応答である。翌5日の朝、ホテルの部屋のテレビでは北朝鮮から7発のミサイルが日本海に向けて発射されたとのニュースを報じており、自分の目を疑った。
一般的に、リスク管理において、最初にリスク管理方針を決定したあと実施するのがリスク(要因)の洗い出しである。ただ、リスクの洗い出しを完璧に行うことは困難である。リスクは、時代や技術革新などで変化するからである。現に、BSEや鳥インフルエンザとった食に関連するリスク、情報化の進展に伴う個人情報漏洩やシステムトラブルなどのITリスク、知的財産に伴う訴訟リスクなど、10年前にはなかったリスクである。
だから、リスクの把握を定期的かつ継続的に行うことが重要なのである。それによりリスクの網羅性が高まってくるからである。各々のリスクの発生確率と被害金額の推定は次のステップである。発生した場合の影響や被害規模を推定して、対策を検討すべきとなったら次のアクションを起こせばよいのである。


リスクを洗い出せ

全社経営の視点では、被害の大きなリスクがより重要なリスクであるケースが多く、現場の視点では、発生確率の大きなリスクが注目される傾向にある。しかし、いずれにせよ、その前にリスクを幅広く洗い出しておくことが重要である。
5日のプレゼンでは、自戒の念を込め、「リスク管理においては、想定されるリスクはなるべく洗い出すようにしましょう。そのリスクの発生確率が低く、対策のレベルを低いものにとどめたとしても、事前にリスクを認識しておくことで、いざという時の対応に差がでてきます。」との説明をした。

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