2016年03月31日
サマリー
◆2015年6月に適用が始まったコーポレートガバナンス・コードを契機に役員報酬の改定に着手する企業が増えている。これまで日本企業における役員報酬は聖域として扱われ、企業の中で最も改革が遅れていた部分ではないだろうか。ところが役員報酬を取り巻く風向きは変わり、その聖域にメスを入れようとする動きが活発化している。
◆日本企業の役員報酬の特徴として、基本報酬や役員退職慰労金といった固定的・安定的に支給される報酬の比率が高く、業績に連動した変動報酬の比率が低いことが指摘されている。そのためリスクテイクに対するインセンティブが働きにくいうえ、報酬水準自体も欧米と比べ相対的に低いことから、国際的な競争力の低下が懸念されている。
◆大和総研がこれまでに開催したセミナーで実施した役員報酬に関するアンケートによると、企業が理想と考える役員報酬の構成比率の平均は、基本報酬が5割強、業績連動報酬が3割弱(短期業績・中長期業績の合計)、自社株報酬が2割弱という結果であった。ところが、現実には基本報酬が80%程度を占めていると言われており、理想と現実のギャップが浮き彫りとなった。
◆今後、コーポレートガバナンス・コードの趣旨に沿って役員報酬を改定するにあたっては「役員報酬の設計思想・方針の決定」、「報酬額の決定プロセスの透明化」、「メッセージ性のある情報開示」がポイントになるであろう。また、具体的な報酬制度の設計では「変動報酬の割合拡大」、「業績連動期間の長期化」、「自社株報酬の導入」が進展することが予想される。
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