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コーポレートガバナンス・コードとサステナブル経営

安井 明彦

今年の企業経営においては、コーポレートガバナンス・コードへの対応が最大テーマの一つとなっている。コーポレートガバナンス・コードは、企業の「稼ぐ力」を強化するための“攻めのガバナンス”実現がその狙いとよく言われるが、社外取締役(=外部の目)の選任を通じた収益力向上、企業価値向上という面で語られることが多い。ここでは、「稼ぐ力」が含むもう一つの側面である、持続的な成長という面に目を向けてみたい。


コーポレートガバナンス・コードでは、「稼ぐ力」強化に向けては、透明・公正・迅速・果断な意思決定の仕組みを整えることが重要と説いている。「透明・公正な意思決定の仕組み」とは、コンプライアンスを順守し、適切な内部統制が有効に働き、会社の方針・計画・手続きが明確で十分に開示できる意思決定の仕組みのことである。「迅速・果断な意思決定の仕組み」とは、権限が適切に委譲された上で、取るべきリスクは取ることができる意思決定の仕組みのことである。前者の仕組みを支えるキーワードは、監督と執行の分離、情報の透明性、市場の目による監視等であり、後者は、権限委譲・分権体制、リスク管理体制等が挙げられよう。


ところで一般に、持続的な成長のためには、原理原則を継続しつつ、環境変化にも対応していくことが求められる。そのためには、自己を透明・公正に客観視した上で、迅速かつ果断に課題や問題点を修正し、変化に適応できなければならない。正に、透明・公正・迅速・果断なアクションが求められるのであり、この意味で、上述した「稼ぐ力」強化のための意思決定の仕組みは、持続的な成長、すなわちサステナブル経営推進のためにも不可欠な仕組みと言えよう。


それでは、サステナブル経営の実現のためには、この仕組みを構築しさえすればそれで十分なのだろうか。皆さんは、「原理原則を継続しつつも、環境変化にも対応できる会社」と聞いた時、どのような姿や表現を想像するだろうか。「危機に強い会社」「回復力がある会社」「環境変化を発展や成長のバネにできる会社」「(その結果)働き手と顧客を魅了し、社会から支持・応援される会社」・・・等々、色々あると思われるが、こうした姿は「稼ぐ力」強化のための静的な仕組みだけを作れば実現できるものではなさそうなことは、容易に想像できるだろう。すなわち、単なる静的な仕組みの導入に加え、恐らくは社員の考え方やモチベーションに直接インパクトを与えるような、動的・改革的な取組みを含めた様々な施策が必要となるのである。


このように、「稼ぐ力」強化のための道のりは、決して社外取締役の選任や仕組みの導入だけに止まらない。いくつものやるべきことやハードルが待ち構える容易ならざるものなのである。こうした考え方から、今回のコーポレートガバナンス・コードへの対応について、大和総研では、社外取締役の選任や仕組みの導入はあくまで第一歩に過ぎず、そうした取組みをきっかけとして、コーポレートガバナンス・コードが求めるビジョン・価値観の共有や戦略の構築、その実現に向けた組織体制の構築、そして「稼ぐ力」を実現するアクションに結び付ける人事・人材マネジメントといったいわば組織運営全体に目を向けることに本質があると考えており、経営課題に応じた様々なソリューションを用意している。コーポレートガバナンス・コードへの対応を「稼ぐ力」強化に結び付けられるかは、実は社外取締役の選任や仕組みの導入といった一次的な動きをした後こそが、勝負の分かれ目になるのである。


繰り返しになるが、コーポレートガバナンス・コードへの取組みは、第一歩に過ぎない。逆に言えば、コーポレートガバナンス・コードは、この容易ならざる道のりに取り組む方向性やきっかけを示してくれているとも言える。すなわち、コーポレートガバナンス・コードは、サステナブル経営実現にとっての最初の条件を示すものとも言えるのである。

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