今年6月の株主総会シーズンを経て、上場会社による社外取締役の設置が進んでいる。TOPIX Large100構成銘柄でチェックしたところ、社数で11社と1割強、人数では約7%の増加となった。驚くほどの数字ではないが、着実な増加ペースであることは間違いない。大規模な企業を中心に選任が進んだ結果、東証一部上場会社の55%が社外取締役を設置済みとなっている。今後は中堅規模の上場会社における取り組みも注目される。
選任された社外取締役の略歴を俯瞰すると、金融機関の出身者が減少している模様。機関投資家が独立性に問題があるとして、議決権行使などで批判的な姿勢を強めていることを受けたと思われる。その代わりに弁護士や会計士など専門家および大学教授が目につく。企業経営者は伸び悩んでいる感があるが、会長・社長の経験者は人材に限りがあるので、役位よりも専門性(海外進出経験、新規事業担当など)を重視して裾野を広げることが有効だろう。
近年、女性を社外取締役に選任する事例が目立っているが、上場会社全体では未だ数%に止まっていると見られる。もっとも人材の供給面に関わる現実的な問題として、大企業の取締役会で経営意思決定に関わる女性の社内取締役が少ない以上、やむを得ない側面もあるだろう。わが国企業におけるグローバル展開の必要性を鑑みると、むしろ外国人の社外取締役が非常に少ないことの方が、より問題視されるべきとも考えられる。
複数企業の社外取締役や社外監査役を兼任する例も増えている。独立性に問題のない候補者に対する需要が高まり、人材の供給が追いつかなくなってきた可能性があろう。同傾向は今後、加速することが予想される。上述したように人材の裾野を広げる努力に加えて、多忙な人物でも社外取締役として有効に機能できるよう、取締役会議案の合理化や情報提供の効率化など、コーポレートガバナンス運用面における工夫が求められる。
社外取締役の選任が企業および投資家から重要視されるのは、取締役会における「監督と執行の分離」を進めるために他ならない。社内取締役が大多数を占めるわが国企業が監督と執行を分離するには、議長職をCEOと別にすることは重要なポイントとなる。しかし取締役会議長の大部分がCEOという状況は、ここ数年間において変わっていない。例えば元CEOである会長でも、現在は非執行ならば議長とすることに意義があるのではないか。
全体的には、もはや社外取締役については「選任」のみがテーマではなく、「運用」および「活用」がポイントになってきている。上場会社に社外取締役がいるかいないかという論点は、アジアを含むグローバルにおいてほぼ唯一、法規制による選任の義務付けがないわが国だけのもので、極めてローカルな問題として異端視されかねない。社外取締役の設置は上場会社に最低限の要請として、早急に次の段階に進む必要があるだろう。
先月、法制審議会の会社法制部会は、「会社法制の見直しに関する要綱案」の附帯決議で、金融商品取引所が「上場会社は取締役である独立役員を1人以上確保するよう努める旨の規律」を設けるよう求めた。企業の自主的な取り組みもあって来年以降、社外取締役の増加ペースが速まることは間違いないだろう。 わが国上場会社が社外取締役を前提としたコーポレートガバナンスに取り組む、今年は最後の猶予期間といえるかもしれない。
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